Solid State Planetary Science Group Seminar
2008 second half

Mon 9:30-12:00 @ISAS A-5F conference room

Kato, Fujimura, Tanaka, Iwata, Hayakawa, and Okada Laboratory,
Planetary Science Group,
Institute of Space and Astronautical Science,
Japan Aerospace Exploration Agency.

- Everyone is welcomed -

For students: 固体セミナー憲章(PDF)

October   -   November   -   December   -   January   -   February   -   March

October

2015-10-01 Masanao Abe ISAS/JAXA presentation
地球外物質研究グループについて
今年7月に地球外物質研究グループが発足した。
これまではやぶさ帰還試料のキュラトリアルワークを業務として行っていたが 今後ははやぶさ2やオシリスレックス試料の受入も予定しており、次世代のサ ンプルリターン探査に対応するキュレーション拠点、地球外物質の研究のため の学術拠点として世界を牽引する役割を担うことを目的とした研究グループと して位置付けられている。
グループのこれまでの活動の経緯やこれまでの成果今後の展望について述べると 同時に喫緊の課題となっているはやぶさ2試料受入準備状況について報告する。
2015-10-08 Kisara Uemoto Tokyo Univ. D3 presentation
月SPA盆地形成により生じたimpact meltの層序と分化
Abstract PDF
2015-10-22 Ryuhei Yamada NAOJ presentation
月の深部はどうなっているのか?
天体の構成物質や熱的状態を明らかにするには、天体の内部の情報が必要不可欠である。 月の内部構造はこれまで、主にApolloミッションでの月地震探査データや、国内、海外の 探査で得られた月の測地学データ等から調べられてきた。月の地震データは、Apollo以降 取得されていないが、月の測地学的情報はNASAのGRAILミッションでの重力場観測を通 して大きく改善された。
本発表では、特に月の深部構造に注目して、Apolloの月地震データとGRAIL+LLR で得ら れた最新の月測地データを組み合わせて、内部構造がどこまで改善されるかシミュレーシ ョンを行った結果(Yamada et al.,2014)と、実際にデータから新たに決めた最新の月内部構 造モデルの結果(Matsumoto et al.,2015)について紹介する。
また、新しい月内部構造モデルから推測される月の初期進化モデルについて考察した結果 についても簡潔に議論する予定である。
2015-10-29 Koutaro Saida Tokyo Univ. M1 presentation
「はやぶさ2」搭載中間赤外カメラTIRによる科学観測
2014年12月3日に小惑星探査機「はやぶさ2」が打ち上げられた。その科学観測機器の1つに中間赤外カメラ(Thermal Infrared, TIR)が搭載されている。
「はやぶさ2」の目的地はC型小惑星「1999JU3(現在は名前が決定しRYUGUとなる)」である。TIRは、その「RYUGU」を8~12μmの波長領域で熱撮像を行い、熱輻射量(温度)の分布を計測し表層面の熱物性を決定する。観測で用いる波長帯(8~12μm)では多くの物質で熱放射率が高く、また一定であることが知られており、人間の皮膚の温度を測定するサーモグラフィでも、この波長帯が使われている。また、このTIRは金星探査機「あかつき」に搭載された中間赤外カメラLIRと同設計である。
さて、温度分布から何が分かるのか。大気を持たない小天体の表面温度は日射量で決まる。つまり朝方と夕方は温度が低く、昼間は温度が高い。しかし深さ方向の温度分布を考慮すれば熱伝導の影響により日射量の変動に対して表面温度の応答が遅れる。この応答の遅れの程度を表すパラメータを熱慣性と呼ぶ。この熱慣性が観測から求まれば、小天体表面の粒子サイズに関する情報を抽出できる可能性があり、また表面の温度分布が分かる。
本発表では、先行研究として小惑星の熱環境について書かれた論文を紹介し、それを踏まえたうえでTIRの概要や科学観測について議論する。

November

2015-11-06 Motoya Kadota Tokai Uni. presentation
火星における南緯0〜30°において縦孔はマリネリス渓谷の付近には存在 せずアルシア山の麓にのみ存在するのか
火星には水が流れた痕のようなガリや,水の侵食によってできた説もあるマリネリス 渓谷などがあり水の可能性が考えられる.本研究は,マリネリス渓谷の付近南緯0〜3 0°という条件のもとでMROの画像を検索し,その画像データを,ENVIを用いて26個の 縦孔候補を発見し,位置座標を特定し,地図上に並べた結果,マリネリス渓谷の付近 には縦孔候補はなく,タルシス地方のアルシア山の麓にのみ存在した.アルシア山の 麓の縦孔候補の中の観察や周りの状況などからまた新たな研究につなげていく.
2015-11-06 Kazuma Oogai Tokai Uni. presentation
月のコペルニクスにおける基地建設の可能性・適している場所があるかど うか
人類は過去に月へ降り立つことや探査機を送ることに成功していますが、未だ至って いな い月での基地建設へ近年では縦孔の構造などが注目されています。そこでその可能性 を北緯9.7° 、西経20°に位置するコペルニクスという直径93kmのクレーター内で基地建設に適し ている構造 とされている”negative relief”、”Rock bridge”、”Pit”構造の場所を探し、 そこが実際 どのような構造をしているのかということをLROの画像を使いながら発表します。
2015-11-09 Ayane Tsubouchi Tokai Uni. presentation
二つの月面年代測定法による月面年代の再測定~月の収縮に関する検証~
現在の月では火成活動(マグマの一連の流れ)を見ることができないが,月面の観測を行うことで過去の火成活動の様子を知ることができる.本研究では,先行研究において若い年代が算出された領域の年代を再測定することで,その領域の年代が正しいことを確認する.年代測定は二つの月面年代測定法を用いて測定精度の向上を図る.その上で,かつてはあったはずの火成活動がどのように終了していったのかについて,先行研究における「月の冷却による月の収縮」の仮説で月は収縮したかどうかについて着目し検証を行う.今回は,二つの月面年代測定法を用いた年代測定結果の報告をする.
2015-11-09 Reina Shinoda Tokai Uni. presentation
隕石衝突による月の縦孔形成後において屋根上部と下部で受けるダメージは異なるのか
SELENEの地形カメラによって3つの大きな縦孔が発見されている。縦孔の天窓は、月地下の溶岩チューブまたは地下空洞上に開いており、この縦孔構造は隕石衝突による形成と断層起源の形成の2つが原因と考えられている。近年行われた隕石衝突を模擬した小規模な実験において形成された縦孔と、屋根上部の形状はSELENEの地形カメラやLROCのNAC画像で見られる形状はよく似ていることが確認されている。本研究では隕石衝突による形成と仮定し、溶岩チューブ屋根に隕石衝突した場合に起こる屋根部の影響を数値流体計算コードであるiSALEによる衝突シミュレーションを用いて再現することを目指している。本発表では、iSALEを使用して行われた月の縦孔に関連した衝突シミュレーション(E. Martellato, 2013)の追試の研究結果を発表する。
2015-11-26 Yusuke Nakauchi SOKENDAI, D2 paper review
C.A. Hibbitts, G.A. Grieves, M.J. Poston, M.D. Dyar, A.B. Alexandrov, M.A. Johnson, T.M. Orlando, Thermal stability of water and hydrosyl on the surface of the Moon from temperature-programmed desorption measurements of lunar analog materials Icarus, 213 (2011), 64-72
月探査機の観測結果により、月表層において水(OH基含む)の存在が示唆された。 水の存在に関しては様々な議論がある。本論文では、月面での水の熱的安定性等を 理解することを目的として、月類似物質への水の吸着について昇温脱離(TPD)測定法 を用いて調査した。この結果、鉱物表面はmareやglass, agrutinateリッチな物質より 多くの水を吸着できることが示唆された。この結果は月面高緯度におけるフレッシュ な長石クレーターの水との関連も説明できるとしている。

December

2015-12-02 Naoki Shibata ISAS/JAXA presentation
火星内部構造探査InSight:脈動で見る内部構造
NASA Discoveryプログラムの12番手であるInSight(Interior Exploration Using Seismic Investigations, Geodesy, and Heat Transport)は人類初の本格的な火星内部構造探査である.打ち上げを目前に控え急ピッチで開発が進んでいる.主要な観測装置として広帯域地震計,熱流量計,回転運動計測のための電波中継機が搭載される.本計画では地球型惑星の形成と進化の理解の鍵となる内部構造即ち内部の層構造と構成物の組成(コアのサイズ・状態・組成,マントルの組成と層構造,地殻の厚さと層構造)の知見を得ることを目的としている.本発表ではInSight計画について紹介し,特に地表風によって励起される脈動による内部構造の解析について検討結果を報告する.地表風による地動の励起レベル,励起された脈動の振幅スペクトルから内部構造の情報を引き出す手法について議論する.
2015-12-17 Takahiro Oishi Tokyo Uni presentation
月・惑星探査用飛行時間型質量分析装置の開発
月・ 惑星探査において、質量分析装置を用いたその場測定は年代計測、同位体計測、揮 発性物質計測など多岐にわたる太陽系探査に貢献している。ISASでは月周辺プラズマの イオン質量分析器が開発されたが、月・惑星の岩石を構成する 主要元素や惑星大気の測 定を目的とした質量分析器は未開発であり、その開発が望まれている。また、質量分析 器はこれらの物質計測に加えて、その場K-Ar年代計測のための質量分析部としても応用 できる。そこで私はその場K-Ar年代計測のための小型のTOF-MS(Time-Of-Flight Mass Spectrometer:飛行時間型質量分析器)の開発を進めている。
我々が検討している年代計測システムではLIBS(Laser-Induced Breakdown Spectroscopy: レーザ誘起絶縁破壊分光法)によるK濃度測定とTOF-MSによるAr同 位体測定からK-Ar年代 を求める。その場K-Ar年 代測定が可能となれば、火星のノアキス代からヘスぺリア代に 起きた気候変動や、月の進化の過程について制約を課すことができる可能性がある。そ こで私は、着陸機に搭載可能な直径100[mm]、全長200[mm]程度のTOF-MSを開発し、イオ ンを約4[keV]まで加速することで、質量数40のピークにおいて160程度の質量分解能を 得ることを計算機シミュレーションにより確認した。
また、これまでにイオン源とTOF-MSで構成されるK-Ar年代計測のための試験モデルの製 作を行った。イオンを加速もしくは反射させるため、リング状の電極とインシュレーター を交互に結合し、イオンを自由飛行させるドリフトチューブに取り付けた。また、加速 部や反射部では一様な電場を形成するために、リング状の電極とインシュレーターの間 を抵抗に繋ぐ必要がある。そこで、抵抗を繋いだユニバーサル基盤に数[kV]の高電圧を 印加し、真空中で放電が起こらないことを確認した。さらに、この試験モデルでは部品 を組み替えることにより、イオンを直線的に飛行させるリニアモードと、イオンを反射 させるリフレクターモードを切り替え、ミッションに合わせた最適な形状を選ぶことが できる。また、リフレクトロンの前段階として直線加速方式でTOF計測を行った。
本発表では、TOF-MS試験モデルの開発状況と、今後の実験予定について報告する。
2015-12-24 Yamato Horikawa Sokendai, D3 paper review
M. H. Zhu, J. Chang, T. Ma, W. H. Ip, W. Z. Fa, J. Wu, M. S. Cai, Y. Z. Gong, Y. M. Hu, A.A. Xu, and Z. S. Tang, Potassium map from Chang'E-2 constraints the impact of Crisium and Orientale Basin on the Moon, Scientific Reports, Nature, 3 (2013), 1611
月のマグマオーシャンの固化過程において、KREEP物質は地殻とマントルの境界に濃 集・結晶化し、その後クレーター衝突や火山活動によって表面上に噴出したと考えら れている。したがってKREEP物質の月全球観測やクレーター盆地領域におけるKREEP分 布の調査は、月の地質学的な進化を理解する上で重要である。本論文では、Chang'E- 2のガンマ線分光計で検出された新たな月全球のカリウム分布を報告する。Chang'E-2 による観測は、これまでのLunar ProspectorやKaguyaでのガンマ線分光計による観測 と概ね一致する結果となった。これまでの観測との違いとして、危難の海と東の海の カリウム存在度が周囲の領域より比較的高く検出されたことが分かった。危難の海と 東の海を形成したそれぞれの衝突は下部地殻まで貫入し、より深い物質を月表面に掘 り返した可能性があると考えられる。

January

2016-01-14 Kazuma Oogai Tokai Uni. presentation
月Copernicusクレータにおける基地建設に適したRock Bridge構造は存在する
人類は未だ月での基地建設には至っていないが,長期探査を可能にするため,月に基地を建設する動きがある.そこで注目されている場所として,Rock Bridge構造があげられる.  Rock Bridgeは存在するのかを,月の表側にあること,科学的にも重要なクレータであることを踏まえ,Copernicusクレータの中での発見を目指した.この領域において,先行研究では発見されていない新たなRock Bridgeが存在するか調査し,そのRock Bridgeに対して基地建設の適性があるか評価することを目標とした.探索の結果,3か所のRock Bridge候補を見つけたが,その発見したRock Bridgeの下に空間が存在するかを明らかにすることはできなかった.しかし先行研究と似たような形のものを発見することができたため,この候補が,将来基地を建設する場所に適しているかを,Rock Bridgeを挟んだ孔の深さ,孔の底の状態,Rock Bridgeの向き,Rock Bridge候補周囲300mの範囲でのクレータカウントを行い,考察を行った.
2016-01-14 Reina Shinoda Tokai Uni. presentation
計算機シミュレーション実験による月地下空洞上への隕石衝突現象の解明 〜隕石衝突によって生じるバックスポール現象は月地下空洞探査に影響を及ぼすのか〜
SELENEに搭載された地形カメラによって3つの大きな縦孔が発見された。その縦孔下に存在すると考えられている地下空洞は基地建設地候補に挙げられており、基地建設前に空洞内を探査することは重要である。地球上で発見されている地下空洞では天井部が崩壊し、底に岩が散在している。仮に、月の地下空洞底に、地球上の地下空洞と同様に岩が散在していた場合は、岩が障害となり、探査が困難になる。しかし、Lunar Reconnaissance Orbiter (LRO)に搭載された 0.5m/pixel の解像度を持つ狭角カメラ Narrow Angle Camera (NAC)によって撮像された月の縦孔底の画像からは探査に影響を及ぼす程度の大きな岩が確認されてない。本研究では、月地下空洞の天井に隕石衝突が起きたとき、天井の上部と下部の破壊がどのように異なり、天井後背面飛散(バックスポール現象)した岩がどのように飛び出すかImpact Simplified Arbitrary Lagrangian Eulerian (iSALE)コードを用いて衝突しミュレーション解析を行った。今回の実験では、実際に月の表面に見つかっている縦孔を模擬し、地下空洞の天井(target)厚みをマリウスヒルズの縦孔では 26m、静の海の縦孔では 47m とし、それぞれ直径 4.0m、7.2m の衝突物(projectile)を��速さ12km/sで天井に垂直に衝突させた。その計算機シミュレーション結果から、月地下空洞上への隕石衝突現象を理解するとともに、月地下空洞がどのような環境になっていると考えられ、その環境下での探査に影響はないのかを考察し、発表する。
2016-01-21 Motoya Kadota Tokai Uni. presentation
火星の縦孔研究 〜火星の南緯0°〜30°の縦孔で最も探査拠点に適すのはどれか〜
2007年にCushingらによって,通常のクレーター.よりも深さ直径比が大きい縦孔が発見された.火星の大気は6〜9hPaで,地球の1013HhPaに比べるとはるかに希薄であるため,火星表面の探査活動をする際に,有害な放射線による被ばくの問題や温度の問題,隕石衝突などの問題が生じる.その解決策として,縦孔に探査の拠点を設けることが考えられる.なぜなら,放射線や温度,隕石などから探査者を守ることができるためである.さらに,火星表面の温度変化に比べて縦孔の中は変化が少ないため,液相の水の発見が期待できる縦孔を探査の拠点にすることは重要である.
本研究は,過去に水の侵食によってできたとされるマリネリス渓谷と同緯度の南緯0°〜30°の範囲において,アメリカの火星探査機Mars Reconnaissance Orbiter(MRO)に搭載されているHigh Resolution Imaging Science Experiment (HiRISE)という高解像度カメラ(衛星高度300kmから0.3m/pix)のデータを利用して縦孔を同定した.また,縦孔の位置や,孔周りの凹凸,孔の底の状態の調査をした.調査で見つかった25個の縦孔の中でどの縦孔が最も火星探査の拠点に適しているかを㈰標高が低いこと㈪縦孔の底の岩が小さい事㈫横穴が存在すること㈬縦孔の周辺に地下空洞の存在を示唆するような陥没地形がある事の4つの判断基準をもとに検討を行った.
結果として,緯度 1.591°S,経度 231.05°E付近で見つかった縦孔7が,南緯0°〜30°で見つかった縦孔25個の中で最も拠点に適しているといえる.この縦孔を拠点とすることで,今後の火星探査は,周回衛星による探査だけでなく,火星の縦孔を直接探査することができ,火星の観測及び研究がより充実すると考える.
2016-01-21 Ayane Tsubouchi Tokai Uni. presentation
クレーター崩壊度地質ユニット年代測定法の適用評価
月面の年代測定は,かつて月面上で起こっていた海の火成活動の様子を知るうえで重要な手がかりとなる.月面年代測定の多くはクレーター年代学に基づくクレーターサイズ頻度分布年代測定法が用いられる.しかしながらこの測定法は二次クレーターの影響を受けやすく,そのため測定年代には誤差が生じやすい.よって本研究では,先行研究において若い年代が算出された領域に対し,二次クレーターの影響を受けないという利点を有するクレーター崩壊度地質ユニット年代測定法も適用し,測定年代の整合性を確認する.今回は,これまでに算出した年代測定結果を報告する.
2016-01-28 Takahiro Oishi Tokyo Uni., M2 presentation
月・惑星探査用飛行時間型質量分析器(リフレクトロン)の開発
太陽系探査において、質量分析器はその場での地球磁気圏や月・惑星周辺のプ ラズマ計測、中性大気計 測、 同位体計測、揮発性物質計測等に幅広く用いられ ている。例えば、2012年 に火星のゲールクレーターに着陸したNASAの火星探査 車CuriosityのSAMにはQMSが搭載され、ゲールクレーターで揮発性物質や地 層の 年代をその場で計測した。
このように、月・惑星の表層物質計測を目的とした質量分析器 の開発は日本が 月・惑星の着陸 探査を進める上で極めて重要であるが、国産の着陸探査用質量 分析器が宇宙機に搭載された例はない。また、質量分析器はこの物質計測に加え て、その場年代計 測システムの質量分析部としても利用できる。その場での年 代計測が可能となれば、月の進化や火星のノアキス代からヘスぺ リア代に起き た気候変動の過程について制約を課すことができる可能性がある。
これまでに東京大学のグループでは地上実験でLIBSとQMSを用いたその場K?Ar年 代計測システムの開発を進めており、実験室モデルで約10%の計 測精度を達成し ている。そこで、本研究では地上実験で用いられる質量分析の手法を基に、月・ 惑星着陸探査を想定したその場K?Ar年代計測システムに搭載可能な全長200mm、 直径100mm程度の小型のTOF-MSを開発した。小型化したTOF-MSでは、年代計測の 要求性能を満たすため、寸法と 電圧に関する最適 化に加えて、パルス高圧を高 い繰り返し周波数で印加する方式を採用した。また、このTOF-MSは年代計測に必 要な質量分解能を満たす事をSIMION7.0による計算機シミュ レーションで確認し ている。
このシミュレーションに加えて、小型のTOF-MSの動作と性能を確認するために TOF-MSの試験モデルを製作し、真空チャンバー内の残留 ガス計測の実験によ り、質量分析が可能である事を確認した。さらに、この試験モデルの設計を基 に、かぐや衛星搭載の粒子計測器MAP-PACE-IMAで培ったTOF計測 の技術を応用し て、TOF-MSのフライトモデルの構造について考察し、その質 量を1 kg程度と見 積もった。
* *本研 究で開発したTOF-MSは、この年代計測に加えて、表層物質の元素計測 や、揮発性物質計測、更には惑星大気物質計測への 用途が期待される。例え ば、レーザと質量分析器を組み合わせた小型のLaser Mass Spectrometerは惑星 の表層物質計測に役立つ可能性がある。そこで、TOF-MSの試験モデルを利用し て、イオンに加えて中性粒子が計測可能なLaser Mass Spectrometerの試験モデ ルを設計・製作した。さらに、シミュレーションや実験に より、小型のTOF-MS を用いた揮発性物質計測や、惑星大気物質計測についても利用できることを確 認した。
2016-01-28 Yusuke Nakauchi SOKENDAI, D2 presentation
Experimental simulation of space weathering effect caused by solar wind proton implantation on hydrated silicate minerals
太陽系の物質分布を理解するためには観測や実験室で得られた結果を総合的に理解す ることが必要になってくる。さらに太陽系初期の物質が現在どのように分布している かを調べることで、太陽系形成時の物質分布の理解にもつながると考えられる。
 C型小惑星の総質量はメインベルトの大部分を占める。さらに反射スペクトルの類 似性から、炭素質コンドライトの母天体であると考えられてきた。炭素質コンドライ トは天体規模の溶融を経験しておらず、太陽系形成時の情報を保持していると考えら れているため、C型小惑星の分布を調べることは重要である。
 一言に炭素質コンドライトといっても、その組成等の違いにより分類され、その違 いは母天体に依存すると考えられている。しかし小惑星のスペクトル分類は隕石の分 類よりも粗い。この問題に対して、炭素質コンドライトの反射スペクトルで特徴的な 吸収形状を示す3um帯を用いる事が提案されている。
 しかし、近年の月探査結果と月サンプルを用いた実験から太陽風プロトンの照射に より反射スペクトルの3um帯が変化することが報告された。太陽風プロトンの照射は 大気のない天体表層においては普遍的であると考えられるが、C型小惑星については きちんと調べられていない。
 本研究では、C型小惑星表層での太陽風プロトンによるスペクトル変化を調査する ため、炭素質コンドライトの主要構成鉱物であるケイ酸塩鉱物を用いて実験を行った。 本発表では、その結果から考えられるプロトン照射による鉱物の構造変化と反射スペ クトルの変化の関係を考察した。

February

2016-02-04 Naoya Sakatani JSPS PD presentation
レゴリス模擬物質の熱物性計測と月面熱観測データの解析
 天体表層レゴリスの物理特性を調べることは、惑星科学の様々な観点から重要 な意義を持つ。例えば、クレーター内部・周辺の粒子サイズや密度と いったパ ラメータを推定できれば、実際の天体上での衝突物理過程の理解に貢献できる。 また、着陸探査においてもレゴリスの素性を事前に理解するこ とは探査機の安 全性確認において重要である。このような表面物理状態の推定においては、熱赤 外観測が有力な手段の一つとなり得る。すなわち、表面 温度は表層レゴリスの 熱物性、特に熱伝導率に高い感度を持ち、更に熱伝導率はレゴリスの物理パラ メータと相関がある。
 そこで私はこれまでに熱伝導率と粒子サイズや空隙率などの物理パラメータの 関係性を実験的に調査し、それらの関係を定式化したモデルを構築し た。本発 表では、この熱伝導率モデルと LRO 搭載熱赤外放射計 Diviner のデータを用 い、月の局所領域のレゴリスの密度分布を推定した結果を報告する。
 一方で、月面に適用した熱伝導率モデルは月レゴリス模擬物質の室内実測値で 校正したものを使っていたが、模擬物質がレゴリスの熱物性を模擬でき ている かどうかは不明である。そこで、2 種類のレゴリス模擬物質の熱伝導率計測を実 施し、それらの熱物性の違いを検討した。また、レゴリスの粒径分布がよく分 かっている月面のみでなく、例えば小 惑星に適用するためには、粒径分布が熱 伝導率に与える影響を知っておく必要がある。現在、粒径分布の影響を把握する ための実験を実施しており、そ の初期結果についても報告する。
2016-02-18 Takefumi Mitani ISAS/JAXA presentation
ERG衛星搭載の高エネルギー電子観測器(HEP)の開発
 地球周りの放射線帯において相対論的なエネルギーをもつ電子がど のようにして生成・消失するかを解明するために、ジオスペース探 査衛星(ERG)が来年度に打ち上げられる予定である。私は、ERG がプロジェクト化した2012年から、ERGに搭載される高エネルギー 電子観測装置(HEP)の開発を担ってきた。HEPは、加速された高 エネルギー電子(0.07 - 2 MeV)を観測する装置であり、シリコンスト リップ半導体検出器を積層したピンホールカメラである。
本発表では、HEPの概要を紹介するとともに、衛星搭載機器の開発 の一連の流れやその中で生じた課題・対応策をいくつかあげ、今後 の開発に活かせる知見として共有したい。
2016-02-25 Masahiko Hayakawa ISAS/JAXA paper review
Abbott et al. (2016)
"Observation of Gravitational Waves from Binary Black Hole Merger"
Phys. Rev. Let. 116, 061102.

March

2016-03-03 Syun Takita Tokyo Uni. paper review
M. T. Capria et al. (2014)
"Vesta surface thermal properties map"
Geophysical Research Letters doi: 10.1002/2013GL059026
 DAWN探査機搭載、可視赤外分光計(VIR)を用いた小惑星Vestaの観測から得た表面温 度に基づいて、熱慣性の表面マップを作製し、Vesta表面に見られる地質学的な特徴 について熱慣性との関連を議論。
2016-03-10 Hiroaki Shiraishi ISAS/JAXA presentation
無人飛行機を用いた投下設置型観測プローブの開発と西ノ島新島での実証実験
 無人航空機を用いた投下設置型の観測プローブを開発している。火山噴火や地震 発生等によって既設の観測装置が稼働できなくなったり、観測地域・期間に空 白が生じることが想定されるが、この状況を回避するため機動的かつ安全に観測 装置を展開できるツールとなることを目的としている。セミナーでは実証観測 を行う予定の小笠原諸島西ノ島の活動状況、観測プローブと無人航空機の開発状 況等について紹介する。
2016-03-17 Kisara Uemoto ISAS/JAXA presentation
月SPA盆地の鉱物・岩石分布から推定する月マントル組成
月裏側に存在するSouth Pole-Aitken(SPA)盆地は、盆地形成時の衝突により月地下のマントルが、衝突時の熱や圧力で溶融しimpact meltとなって露出すると考えられている。月マントル組成は未だ解明されていないが、月マントル組成を反映しているimpact meltの組成を調査することで、衝突によって溶融した月深部のマントル組成を解明できると考える。ただし、impact melt全体の組成を推定するには、観測できる表層の impact melt の組成が、固化する段階で結晶分化を経た最上層のものか、分化を経ず溶融した深さまでの平均的なものであるのかを推定する必要がある。そのために本研究では、高解像度、広観測波長域を持つ月周回衛星かぐやMIやLALTのデータを基にした鉱物・地形情報を用いて、特にimpact melt が溜まったと考えられるSPA盆地中心部の岩石分布と産状、鉱物の化学組成を水平方向および垂直方向に対して詳細に調査、各岩石層の起源を推定し、SPAimpact melt の露出領域の同定と分化の有無の検証をした。更に、SPAは月最古の衝突盆地のひとつといわれており、月形成時代に起こったとされる月マントルの層序逆転(overturn)の時期との前後関係が議論されているが、分化の有無と、表層に見えている組成から impact melt 全体の組成を推定することができれば、それが overturn 前後どちらの月上部マントルの組成として適当であるか検証できる。結果、盆地中心部において、最上層にはHigh-Ca輝石に富む層(H1層、厚約7km)が存在し、H1層を一部覆う形でLow-Ca 輝石に富むエジェクタ層や、mare層(いずれも厚2km以下)が分布、H1の下にはエジェクタ層より鉄濃度の高いLow-Ca輝石に富む層(L2層、厚約8km以上)が存在することがわかった。H1層、L2層について、
1.鉄濃度において、H1層は同じHigh-Ca輝石の組成をもつmareより低く、L2層は同じLow-Ca輝石の組成をもつエジェクタ層より高い
2.チタン濃度において、H1層はmareより低い、L2層はエジェクタ層より低い(鉄と逆)
3.盆地中心部に広範囲に広がっている
4.層が厚い
ということから、これら2層はSPAのimpact melt であり、H1層(上)L2層(下)に分化しているということが推定できた(L2層の下層以深は観測からは不明)。更にこれら2層は、岩石・元素組成から、overturn後の月上部マントル組成によってできうると考えられることから、SPAの衝突はoverturnの後に起こったと推測できた。これは、overturnが月形成初期に起こったことも観測から推定できたことになる。