Solid Planetary Science Group Seminar
FY2014 first half

Mon. 13:30-16:00 @ISAS A-5F conference room

固体惑星セミナー憲章

April   -   May   -   June   -   July   -   August   -   September

April

May

2014-05-12 Keiko Yamamoto JAXA presentation
GRACE衛星重力データおよびICESat衛星高度計データを用いた南極ポストグレーシャルリバウンドモデルの評価
 2002年に打ち上げられた重力測定衛星GRACEにより、地球重力場の時間変化を測定することが可能となり、そのデータは南極氷床変動など、質量変動を伴う地球物理現象の研究に広く用いられている。南極ではポストグレーシャルリバウンド(PGR)による固体地球内部の質量再配分は無視できない大きさであり、GRACE 衛星重力データからの南極氷床変動量の見積もりにはこの影響の除去が必須であるが既存の PGR モデルはモデル間の値の差が非常に大きい。本研究では、GRACE 衛星重力データと既存のいくつかの PGR モデルを使用して得られた南極氷床変動の見積もりを地域毎に調べ、ICESat 衛星高度計から 得られる氷床の高度変化と比較することで現行の PGR モデルの妥当性を検討した。
2014-05-19 Aiko Nakato JAXA presentation
含水小惑星の加熱脱水過程
 近年の隕石研究から、含水C型小惑星の中には、太陽系形成期に天体内部で水質変質が生じ、その後ある時期に昇温し加熱脱水を経たものが存在していることが示唆された( e.g., Akai, 1988)。また、小惑星の反射スペクトル観測からも、表面物質の加熱脱水が指摘されている(e.g., Hiroi et al., 1993)。しかし、詳しい加熱脱水過程や熱源については未解明である。本研究では、天然の含水CMコンドライト隕石を用いて閉鎖系高真空で加熱脱水の再現実験を行うことにより、含水C型小惑星の加熱脱水過程の解明を試みた。加熱実験生成物は、鉱物学、マトリクスの化学組成、全岩の酸素同位体組成、炭素質物質の熟成度などをパラメータとし、実際の隕石試料と比較観察・分析を行った。その結果、含水C型小惑星の加熱脱水過程には様々なバリエーションがあることがわかり、それらの熱源の一つは高温短時間の「衝撃加熱」であると推定することができた。
2014-05-19 Kazuya Kumagai JAXA presentation
ユレイライト隕石の元素組成に関する研究
 ユレイライト隕石は主にカンラン石と輝石から構成される隕石で,斜長石をほとんど含まず,鉱物間物質として炭素質物質を平均3%と豊富に含んでいる.ユレイライト隕石が含有する珪酸塩鉱物は明らかに火成活動を受けた痕跡を示しており,ユレイライト隕石は分化を受けた隕石群であるエコンドライトグループに分類されている.しかしながら,酸素同位体組成や高い炭素含有量などは,最も始原的な隕石であると考えられている炭素質コンドライトと同じ傾向を示しており,ユレイライト隕石は分化したエコンドライトでありながら始原的な特徴を併せ持つというユニークな隕石グループである.
 ユレイライト隕石はエコンドライトに分類されるにもかかわらず,金属相を含んでいる.その金属相は,鉱物の隙間に細粒状に存在するものと,カンラン石の周囲に存在する粗粒状のものがある.それぞれの金属相の親鉄性元素存在度は異なるが,それらの親鉄性元素存在度パターンはCVコンドライト中のCAIに似ていると報告されている.ユレイライト隕石の金属相には大部分の親鉄性元素が含まれると考えられ,その場合非金属相中の親鉄性元素含有量は低くなる.非金属相中の親鉄性元素存在度は,ユレイライト母天体での分化過程を反映していると考えられるが,親鉄性元素含有量が低く,それに基づいた研究例は少ない.そこで,本研究では,ユレイライト隕石の金属相と非金属相の分離を行い,それぞれの相の親鉄性元素含有量を求め,金属相と非金属相の成因を考察を行う.
2014-05-26 Masayuki Uesugi JAXA presentation
微小試料切断法の開発
はやぶさは小惑星からのサンプルリターンを成功させた。
このようなサンプルリターンミッションで得られる試料は量が限られており、さらに試料サイズがきわめて小さいことが多い。
このような限られた試料から最大限の情報を引き出すためには試料を分割して、一つの試料に対して複数の分析を適用することが有効である。
本発表では、はやぶさ試料や、将来のリターンミッションで得られる試料を分割する方法について、その問題点と開発状況を報告する。

June

2014-06-02 Yuzuru Karouji JAXA presentation
はやぶさ2サンプラの洗浄方法の検討と実作業
キュレーションチームでははやぶさ2のサンプラチームと連携してサンプラの洗浄を行った。
入念な洗浄を行わなかったはやぶさ初号機では、サンプラキャッチャの中がどの程度汚染されていたのか評価することができず、重大な問題を抱えている。
そのためはやぶさ2では射場に至るまでの汚染の評価を定量的に行い、試料帰還後にスムーズにキュレーション作業ができるように心がけている。
しかしながら洗浄するに当たり、現在キュレーションで行っている洗浄方法がそのまま適用できなかったため、いくつかの検討を行った。
水を用いた超音波洗浄ではアルミの基板が傷むこと、ピース保護のために使用しているテフロン製の網から発塵すること、などである。
本発表では、これらの検討を行った結果、どの程度の清浄度を実現することができたかを紹介するとともに、実際にどのように洗浄を行ったかを紹介する。
2014-06-09 Naomi Onose Sokendai presentation
衝突クレーター形成におけるターゲット物質の弾性的応答に伴う細粒破片の低速度放出について
 探査機による詳細な観測を通じて、エロスやイトカワのような小型の小惑星上にもレゴリスが存在する事が判明したが、その形成方法については議論の途上である。母天体がカタストロフィック破壊を経て、その破片が再集積したという説、小惑星表面の岩石表面が熱膨張と収縮により風化して作られたという説、微小隕石の衝突により形成されたという説が上げられているが、衝突クレーター形成の小天体レゴリス形成への寄与は小さいと考えられて来た。なぜならば、Nakamura and Fujiwara (1991)は衝突実験を通じて、細かい破片ほど高速度で放出されると述べているからである。高速度で放出される細かい破片は、重力の小さい商店退場に退席する事は困難である。
 しかし、本研究では多孔質物質である石膏に対する衝突クレーター形成実験を行い、5 mm以下の小さな破片が10m/sec以下の速度で大量に放出されている事を確認し、この放出がターゲット物質のダメージを受けていない部分が衝撃波に対して弾性的に振る舞う事によるものであるという仮説を立てた。衝突点からある程度以上の距離がある領域においては、ターゲット物質は粉砕されておらず、球殻状に伝播する外向きの力を歪みとして蓄える事ができる。衝撃波が通り過ぎた後、粉砕された領域の外側の領域に蓄えられた歪みが開放される事により、その内側にある粉砕された領域が内向きの速度を得、ターゲット表面と垂直に放出される。その速度は、クレーターサイズが大きくなるほど小さくなる事が予測されており、これは飛翔体サイズを変える事により、クレーターサイズを変化させた時の実験の結果と矛盾しない。
2014-06-16 Kisara Uemoto Tokyo Univ. D3 paper review
R. W. K. Potter, G. S. Collins, W. S. Kiefer, P. J. McGovern, and D. A. Kring, Constraining the size of the South Pole-Aitken basin impact, Icarus, 220 (2012), 730-743.
 South Pole-Aitken(SPA)盆地は月で最も大きく最も古い明確な衝突構造である.この巨大な盆地がどのように形成されたかを理解すべく、本研究では様々な衝突物のサイズ、衝突速度、リソスフェアの温度勾配で、SPA盆地規模の数値衝突シミュレーションを行った.ターゲットの温度勾配率やインパクターのサイズをパラメーターとして変化させ、観測によるSPAのデータとを比較し、最もよく合う盆地形成衝突の条件と過程を制約した.その結果、表層近辺の急な温度勾配と月内部の高い温度は、盆地形成過程や盆地構造、衝突によって生成されたメルトのボリュームに大きく影響することがわかった.この数値シミュレーションに従うと、地殻物質は盆地中心から除去され、マントル組成が支配的な大規模なメルトプールが代わりに占めている.メルトプールのボリュームは従来のスケーリング則から導いた結果より大きく、この厚いメルトシートで分化がおこったと仮定したところ、盆地の観測データを使って、~4×10^26 J(直径170km、秒速10kmの衝突物)のエネルギーでSPA盆地が形成されたというシナリオを見いだすことができた.
Yamato Horikawa Sokendai D1 paper review
M. A. Siegler, and S. E. Smrekar, Lunar heat flow: Regional prospective of the Apollo landing sites, Journal of Geophysical Research, 119 (2014), 47-63.
 地球以外でのその場熱流量観測はアポロ15号、17号の2地点のみであるが、その観測量はこれまで見積もられてきた月全球平均熱流量と比較して高く、また15号、17号地点の間で表面熱流量に違いがあることが知られている。その原因として、これまで地殻の厚さや密度、KREEPに富むエジェクタ、地殻下のKREEP層が提案されてきた。
 本論文ではそれら4つの原因を3次元熱伝導モデルに組み込むことで、アポロでの熱流量値に対する影響を調査した。その結果、アポロ熱流量値は地殻下のKREEP層と地殻密度によって大きく変化することが分かった。またGRAILの観測データに基づく地殻モデルを使用すると、観測値と最も整合的であるマントル熱流量値は約9-13 mW/m^2となり、これまでのモデルよりも高い値を示した。地殻下の熱流量が高い原因は、低密度・低熱伝導率なレゴリス層の全球的な断熱効果による可能性、または地殻下のKREEP層がアポロ観測点の下に存在するという局所的な効果による可能性が考えられる。どちらの効果なのかを判別するためには、地殻下にKREEP層があるPKT領域の外側で、その場熱流量観測を行う必要がある。
2014-06-23 Kazunori Ogawa JAXA presentation
小型筐体用の高断熱 MLI の開発: 発泡ポリイミド試作品の性能評価
 月面は昼夜で温度が -200 ~ 120 ℃ 程度変化する厳しい温度環境のため、機器の熱設計が重要な課題となる。着陸機上に搭載する外部露出型の小型観測機器などには、筐体と月面との輻射結合を抑えるため、従来より高断熱の多層断熱膜 (MLI) が必要である。本研究では 10 x 20 cm 程度の筐体を断熱するための、小型でありながら高断熱性能 (実効輻射率 ε* < 0.03) を持つ MLI の実現を目的として開発を行なっている。今回、高断熱素材として期待が高まっている発泡ポリイミドを用いた試作品を製作し、熱真空試験により従来の MLI と性能比較を行なった。この結果、通常用いられる MLI と比較して格段に優れる断熱性能を確認することが出来、同時に発泡ポリイミド材の利点・欠点を整理することが出来た。これらの結果を報告する。
2014-06-30 Junichi Haruyama JAXA presentation
月火星の縦孔・地下空洞探査:様々な動きを踏まえて
 月・火星に見つかっている縦孔、そしてその下につながっていると考えられる地下空洞は、科学的にも興味深く、また将来の有人・無人の活動拠点として重要である。

 2009年、人類史上初めて、SELENEによって地下の空洞に続く可能性が高い巨大な縦孔が発見された後、これら縦孔・地下空洞の探査に向けて、研究会活動などが、日本では行われてきた。その結果、縦孔・地下空洞に関するデータ・知識の蓄積が増大してきた。また、昨年度にはJAXA理事長までやっと月の縦孔の情報が伝わった。そして、多くの研究者、ボランティアの活動で、少しずつでは有るがにも、月の縦孔のことが学会を超えて、社会的にも、知れ渡るようになってきた。
 現在、月面ピンポイント着陸技術実証を考える小型3号機候補SLIM計画では、その着陸点を縦孔近傍としている。また、月縦孔を降下し、さらには縦孔底に続く地下空洞へと進み探査するUZUME計画も、始動し始めた。
 日本だけでは無く、月や火星の縦孔は、特に、この1年で、急速に世界的に認知されるようになってきている。結果、縦孔探査も、国際的にも動き始まりつつある。Googleが懸賞金を出して主催する月着陸レースプロジェクトに参加予定のチームのうち、少なくとも2チームが、縦孔を目指している。早ければ、2015年に、月の縦孔のどこかに、降り立つかもしれない。

 今回は、最近得られた、あるいは得られつつある、月の縦孔情報や、研究成果を、ここ1年で急速に高まりつつある世界的な縦孔探査の動向などを念頭に、語り、議論をしたいと思っている。

July

2014-07-07 Naoya Sakatani Sokendai D3 paper review
M. Delbo, G. Libourel, J. Wilkerson, N. Murdoch, P. Michel, K. T. Ramesh, C. Ganino,C. Verati, adn S. Marchi, Thermal fatigue as the origin of regolith on small asteroids, Nature, 508, 234-236.
近年の探査や熱赤外観測により、km サイズの小惑星は cm サイズのレゴリス粒子で覆われていることが分かってきた。これまで小天体表層のレゴリスの成因については衝突エジェクタの再堆積や微小隕石の衝突によるボルダーの破壊と考えられてきた。前者については、クレーター形成によるエジェクタ速度は小天体の脱出速度を超えると考えられるため、主要なレゴリスの成因にはならない。また、後者に関しては、例えば数 cm のボルダーを破壊するのに必要なタイムスケールは数百万年と見積もられている。本研究は別のレゴリスの成因として、ボルダーの日周期温度変動による熱疲労を考え、隕石の周期加熱実験および材料の疲労の理論に基づいたモデル計算によって、小惑星上での熱疲労によるボルダー破壊のタイムスケールを見積もった。その結果、cm サイズのボルダーを破壊するのに必要な時間は微小隕石による破壊に比べて最大で 4 桁ほど短いことが分かった。すなわち、ラブルパイル天体上でのレゴリス形成は主に熱疲労によって進行する可能性が高いことが明らかとなった。
Jun Takita Tokyo Univ. D3 paper review
Bastian Gundlach, Jurgen Blum, A new method to determine the grain size of planetary regolith. Icarus, 223 (2013), 479–492.
大気のない天体はレゴリスに覆われているが、本論文ではこれを構成する粒子のサイズをリモートセンシングで求めた熱慣性(熱伝導率)から推定する方法について議論している。著者らの提案した方法を太陽系の天体について適用した場合、半径が100Km以下の小天体の持つレゴリスの典型的な粒子サイズはミリメートルからセンチメートルサイズであるのに対し、これよりも大きな天体では10から100マイクロメートル程度の非常に細かいレゴリスを保持するという結果となった。
2014-07-14 Takehiko Arai JAXA presentation
はやぶさ2搭載中間赤外カメラによる隕石の測定
はやぶさ2搭載中間赤外カメラ(TIR)は、C型小惑星1999 JU3を上空から中間赤外域(8~12μm)の波長で熱撮像を行い、表層の温度を決定する予定である。特に小惑星の自転で時々刻々と変化する温度プロファイルから表層物質の熱慣性を見積もり、小惑星の熱に関連する進化の歴史を紐解く。本発表では、JU3と類似する可視・近赤外スペクトル形状を有する炭素質隕石をTIRで熱撮像した結果を報告し、JU3の観測時に隕石種の違いがどれだけ温度測定結果に寄与するか議論する。
2014-07-28 holiday

August

Summer Vacation

September

2014-09-01 Naoya Sakatani SOKWNDAI D3 presentation
真空下における粉体物質の熱伝導率則て実験と微惑星熱進化計算への応用
現在の惑星形成論では、原始太陽系星雲中のダストが集積して微惑星と呼ばれる高空隙率天体が形成し、それらが衝突合体・破壊過程を経て減税の太陽系天体へと進化したと考えられている。しかし、天体としての出発点である微惑星のサイズや内部構造はよく分かっていない。微惑星の描像を変化させる要因のひとつは内部発熱に依る熱進化であり、その程度は微惑星構成物質の熱伝導率に依存する。一方で、微惑星構成物質のようなダスト集合体の熱伝導率に関しての理解は十分でなく、初期微惑星の熱伝導率を制約することが困難であった。そこで本研究は、真空下における粉体物質の熱輸送メカニズムを明らかにし、熱伝導率をモデル化することを目指し、個々の熱伝導率依存パラメータをコントロールした状況において、真空下での粉体熱伝導率測定実験を系統的に行ってきた。  本発表では、これまでに行った粉体熱伝導率の粒径、温度、圧縮応力、空隙率依存性についての実験結果を整理し、真空下での粉体の熱輸送メカニズムの考察、および理論モデルの構築に関して紹介する。また、実験結果に基づいて微惑星の熱進化計算の結果についても議論する。
2014-09-08 Hiroaki Shiraishi JAXA paper review
K. E. Bauch, H. Hiesinger, J. Helbert, M. S. Robinson, and F. Scholten,Estimation of lunar surface temperatures and thermophysical properties:test of a thermal model in preparation of the MERTIS experiment onboardBepiColombo, Planetary and Space Science, 101, (2014), 27-36.
Mercury Radiometer and Thermal Infrared Spectrometer (MERTIS)はベピコロンボMPO衛星に搭載されるペイロードの1つである。MERTISは表面組成と鉱物組合せのマッピングと表面温度変化を観測するために設計・開発されている。観測の事前準備として、表面温度を推定するために太陽輻射入力と表面物質の熱物性を考慮した熱数学モデルを開発した。水星表面の温度測定結果が得られていないため、月表面の熱物性パラメータを用いて妥当性を検証した。その結果、Apollo17号、Clementine、LRO-Divinerの各観測結果とよい一致を示した。開発したモデルは探査機の軌道パラメータと暦データを変更することで水星観測に適用することができる。
Yusuke Nakauchi SOKENDAI D1 paper review
B. Rozitis, E. MacLennan, J. P. Emery, Cohesive forces prevent the rotational breakup of rubble-pile asteroid(29075) 1950 DA, NATURE, 512, (2014), 174-176
これまで、ラブルパイル天体が形状を保持するための力は重力と摩擦力のみが考えられてきた。近年、密度が低く自転速度が早いため重力では形状を保持できないと考えられる天体が発見されてきている。これらの天体の形状を保持する力として、理論モデルではファンデルワールス力が提案されているが、Rozitisらは地球近傍小惑星において初めて観測によりラブルパイル天体がファンデルワールス力により形状を保持している事を示した。
2014-09-22 day off
2014-09-29

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