Solid Planetary Science Group Seminar
FY2013 first half

Thu. 9:30-12:00 @ISAS A-5F conference room

固体惑星セミナー憲章

April   -   May   -   June   -   July   -   August   -   September

April

May

2013-05-02 Naomi Onose Sokendai presentation
デブリ防御における発泡アルミニウムの潜在的魅力
 人類の宇宙活動に伴い、地球周回軌道上に存在するスペースデブリは増加の一途をたどっている。スペースデブリとは、人工的な宇宙ゴミのことで、運用期間の終了した衛星や、打ち上げに使われたロケットの上段、宇宙活動に伴い軌道上に放出された物品、そしてそれらが爆発したり衝突したりして放出される破片が含まれる。低高度軌道上での平均衝突速度は10km/sec程度であるため、たとえ1mm程度の小さなデブリであっても、宇宙機に致命的なダメージを与える危険性がある。これらのスペースデブリから、効率的に宇宙機を守るために、軽量のデブリバンパの開発が望まれている。
 本研究では、軽量デブリバンパ素材の一つとして提案するために、発泡アルミニウムに対する衝突試験を行った。高速度衝突において、多孔質物質は衝撃波を効果的に吸収、散逸する事が知られている。本素材は直径0.3mm以下の開気孔で構成されているため、ミッション期間中に宇宙機が出会う確率の高い微小デブリに対応する事ができる。空隙率82%の発泡アルミニウムに対して、直径1mmのアルミニウム球を6km/secで衝突させると、バルブ型のクレーターが形成され、その大きさは、入口径が2mm、最大径が7mm、深さが10mm程度である。そのデブリを貫通させないぎりぎりの薄さのターゲットの単位面積あたりの質量で比較すると、発泡アルミニウムは、稠密なアルミニウム板の65%程度で十分である事がわかった。
 一連の実験より、ターゲットの空隙率を上昇させたり、衝突速度を増加したりするほど、発泡アルミニウムの防御効率は上昇する事がわかった。
2013-05-02 Takehiko Arai JAXA presentation
太陽フレア望遠鏡搭載太陽センサの開発
 本発表では、我々が国立天文台において開発した太陽フレア望遠鏡搭載太陽センサを紹介する。太陽センサは、4本のCCDラインセンサで、太陽面の磁場ベクトルを赤外偏光分光観測する赤外ポラリメータのスリット部に搭載しされ、スリットが走査した太陽面の位置を正確に特定する。そもそも太陽磁場は太陽活動を駆動する根本的なエネルギー源だと考えられ、活動領域に蓄積された磁場エネルギーの開放で太陽フレアをひき起こすことが知られている。蓄積磁場のエネルギー総量の指数として磁場のシア角が広く使用されてきたが、近年、磁束絡みを表す磁気ヘリシティという物理量が考えだされている。例えば、惑星間空間に放出されるコロナの質量放出は過負荷の磁場ヘリシティ放出だと予想されている。そのような状況があり、我々が開発した太陽センサで太陽磁場の開放位置を正確に特定することが期待されている。
2013-05-09 Ayako Suzuki JAXA presentation
ガラスビーズ層への衝突実験で観察されるエジェクタ地形とその成因
 衝突クレーターは,固体表面を持つ天体上で普遍的に見られる表面地形であるが,衝突条件・環境によって形状が異なることが知られている.つまり,衝突条件と形成地形の関係を明らかにすることで,過去の天体表層の環境を制約することが可能となる.本研究では,衝突クレーターのエジェクタに着目し,周辺大気圧によってエジェクタ地形がどう変化するかを調べた.衝突速度が数~200m/sの範囲では,周辺大気圧が高くなると同心円型のリッジが発達することがわかった.我々は,この同心円型リッジは,弾丸が大気中を進行するときにできる伴流が,クレーターのリムを崩したことで形成されるという仮説を立て,いくつかの測定やモデルがこの仮説と矛盾しないことがわかった.この結果は,惑星表層でのエジェクタ地形形成に直接は応用できないが,伴流とクレーターのサイズの比較から,火星上の小さいクレーターでは,影響がある可能性があることを示した.
2013-05-16 Takefumi Mitani JAXA paper review
The KamLAND Collaboration, Partial radiogenic heat model for Earth revealed by geoneutrino measurements, Nature Geoscience, 4 (2011), 647-651.
 地球はその形成時から冷却しつづけている一方、惑星内部にある放射性元素、特にU,Th, Kの崩壊は連続した熱源となっている。地球から宇宙への総熱流量は現在44.2±1.0TWであるが、地球形成時から残存している熱の寄与と放射性物質の崩壊による熱の寄与について相対的な割合は未だ確定的でない。しかし、放射性物質の崩壊は地球ニュートリノフラックスを計測することにより見積もることが可能である。地球ニュートリノは電気的に中性な粒子で、放射性崩壊に伴い生成され、地球内をほぼ影響受けないで透過する。本論文では、日本のKamLANDにおける地球ニュートリノの精密な測定と、イタリアにある装置での観測をあわせて議論を行う。我々はU-238とTh-232の崩壊により、20TW程度の熱流量が生成されていることを示した。K-40の崩壊によるニュートリノは我々の実験装置の検出限界以下であるが、4TW程度の寄与と知られている。これらを合わせると、地球の熱流量の半分程度のみが放射性物質の崩壊で説明できる。それゆえ、地球形成時の熱は現在も残存していると言える。
2013-05-16 Yusuke Nakauchi Sokendai M2 paper review
A.S. Ichimura, A.P. Zent, R.C. Quinn, M.R. Sanchez, and L.A. Taylor, Hydroxyl (OH) production on airless planetary bodies: Evidence from H+/D+ ion-beam experiments, Earth and Planetary Science Letters, 345-348 (2012), 90-94.
 M3の観測によって、月面におけるグローバルな-OHまたはH2Oの存在が示された。主に高緯度に存在し、他の観測機器のデータとの照合により、それらはごく表層に存在するとの見解から、太陽風起源である可能性が主張されている。今回は、太陽風のプロトンなどにより月面物質のスペクトルがどのように変化するのかを示した論文を紹介する。
2013-05-30 Takumi Kano Tokyo Univ. M1 presentation
Dhofar011 LL7コンドライト隕石の鉱物学的研究
 コンドライト隕石とは、コンドリュールを含む隕石である。揮発性成分を除いた化学組成が太陽大気の元素存在度に近く、形成年代が約45.5億年前であること、全体として溶融・分化していない組織を示すことなどから、太陽系の始原物質を最もよく保存したものと考えられている。コンドライト隕石はその形成以来、さまざまな変化を受けており、その中でも熱変成作用は普通コンドライト隕石母天体の歴史を知る上で重要な手掛かりである。本研究では、変成度がtype7の非常に強く変成されたとされているDhofar011 LL7コンドライト隕石について、光学顕微鏡での観察やEPMAによる化学組成の分析を行い、それらの結果から平衡温度の推定を行った。

June

2013-06-06 Yamato Horikawa Sokendai presentation
月惑星熱流量の精密観測手法に関する検討と測定プローブの基礎開発
 固体天体における地殻熱流量を精密に観測することは、天体内部の温度分布や熱進化、材料物質を制約する上で重要である。これまでの熱流量計は、地下に埋設させ直接測定を行うぺネトレータなどの貫入プローブに搭載されてきた。しかし貫入プローブと周囲のレゴリスとの熱伝導率の違いから、レゴリスの温度場に熱的擾乱が生じるために、貫入プローブに搭載されている熱流量計が本来のレゴリスの熱物性を計測するのは困難である。そこで本研究では、熱流量計を入れた細いプローブを貫入プローブの側面から伸展させることで、熱的擾乱の影響の少ない条件を実現し、熱流量値を高精度で計測できる計測システムを検討している。
 これまでのところ、プローブの測温点を、温度勾配精度が最も高いプローブの先端部分と熱伝導率精度が最も高いプローブの中心部分に配置するモデルを構築し、試作した熱流量プローブの熱伝導率測定精度の評価を行ってきた。モデル構築・精度評価には、測温点がプローブのどの位置にあっても熱伝導率を測定できる原理を用いた。その結果、地球・火星大気圧下で熱伝導率測定を行う場合、プローブの中心~中心から約3-4cmでの熱伝導率測定精度は約5%以内となった。一方、月などの真空環境で行った場合、レファレンスとした線加熱法での測定結果と大きく異なる結果となった。実験のプローブと同様のモデルを用いて伝熱計算を行うことで、各測温点における熱伝導率値に対しキャリブレーションを行うことを目指している。
2013-06-20 Makiko Ohtake JAXA presentation
月周回衛星「かぐや」分光データによる月高地地殻形成過程の推定
 日本が打ち上げた月周回衛星「かぐや」によって、これまでにない高い空間分解能や波長分解能の連続分光データが得られた。これらデータを用いて月高地地殻形の化学組成を推定する事により、地殻がアポロ探査以降従来考えられていたよりも純粋な斜長岩で構成されることや、月裏側に表側より早い段階でマグマオーシャンから固化した岩石が分布する事が明らかとなった。これら事実から考える新しい月の地殻形成過程(マグマオーシャンの固化過程)について紹介する。
2013-06-27 Ryunosuke Imaeda Tokyo Univ. M2 paper review
S. J. Lawrence, J. D. Stopar, B. R. Hawke, B. T. Greenhagen, J. T. S. Cahill, J. L. Bandfield, B. L. Jolliff, B. W. Denevi, M. S. Robinson, T. D. Glotch, D. B. J. Bussey, P. D. Spudis, T. A. Giguere, and W. B. Garry, LRO observations of morphology and surface roughness of volcanic cones and lobate lava flows in the Marius Hills, Journal of Geophysical Research, 118 (2013), 615-634.
 月のマリウス丘地域に見られる火山構造(ドーム, コーン, リル、火砕性堆積物)は, 月下部で生成されたマグマの重要な履歴を残す。ところが1-2kmのコーンを中心としたマリウス丘上の火山構造の形態や組成、地質については未だ十分な制約が為されていない. そこで本論文では, LROに搭載されたLunar Reconnaissance Orbiter Camera (LROC), Diviner Lunar Radiometer (Diviner)及びMiniature Radio Frequency Experiment (Mini-RF)の新しいデータセットを用い、マリウス丘上における火山地形(形状&標高)、組成(珪酸塩鉱物)、後方散乱特性を調べ、これらの火山性構造形成に繋がる局所的な火山活動様式の推察を行った。その結果、ドーム側面に沿う二段階の勾配変化は, 噴出速度, 温度、結晶化度による粘度の変化によって最も良く説明できる事が分かった.また、ドームの標高と形態の変化は, 噴火様式が時間変化した事を示唆するものであった.それゆえ本研究で観察されたマリウス丘上の火山地形の様々な形態とマグマの関係は, 異なる時期に起こった多段階の噴火と対応していると言える.
2013-06-27 Shoko Tsuda Tokyo Univ. M2 paper review
S. Sirono, Effects by sintering on the energy dissipation efficiency in collisions of grain aggregates, Astronomy and Astrophysics, 347 (1999), 720-723.
 微惑星や原始惑星はstickingによるダストの集積によって形成されたと考えられてきた。しかし、最近の研究により、その他の効果も導入しなければダストの集積効率を説明できないことが分かった。
 この研究は、焼結を考慮した集積効率を二次元数値シミュレーションによって求めた。その結果集積するために必要な衝突速度は、焼結していないダストでは500cm/s、焼結体では1000cm/s以上であることが分かった。

July

2013-07-04 Jun Takita Tokyo Univ. D2 presentation
形状モデルを用いた小惑星の地表面温度に対する2次加熱量の程度について
 小惑星上での表面温度の分布は主に太陽からの直接光のあたり方で決まるが、特にNEAの小惑星の形状が凹凸に富むいびつな構造をしているため、天体上での周囲の地表面からの散乱や輻射熱による2次的な加熱の影響が無視できないと思われる。
 今回は、天体の軌道や物理的性質を単純なケースで想定した場合に、これらの影響がどの程度になるかを小惑星Itokawa(1998SF36)の形状モデルを用いて数値的に見積もった結果に関する発表を行う。なお、小天体においては熱的な状態が精密な軌道計算においては無視できない力学的効果を及ぼすことが知られている(Yarkovsky効果、YORP効果)。
2013-07-11 Naoya Sakatani Sokendai D2 presentation
粉体の熱伝導率に与える粒径分布の影響
 月面や小惑星表層を覆うレゴリスは大小様々な粒子の混合物である。したがって、天体表層レゴリスの熱伝導率、もしくは熱慣性から構成粒子の物理状態を推定するためには、粒径分布が熱伝導率に与える影響を調査する必要がある。本研究では、異なる粒径を持つ2種類のガラスビーズを混合したサンプルの熱伝導率を測定した。一方で、異なる粒径の粉体を混合したときの偏析現象は避けられない問題である。その問題に対する検討を含めて、研究の現状を報告する。
2013-07-18 Makiko Ohtake JAXA presentation
月周回衛星「かぐや」分光データによる月高地地殻形成過程の推定
 日本が打ち上げた月周回衛星「かぐや」によって、これまでにない高い空間分解能や波長分解能の連続分光データが得られた。これらデータを用いて月高地地殻形の化学組成を推定する事により、地殻がアポロ探査以降従来考えられていたよりも純粋な斜長岩で構成されることや、月裏側に表側より早い段階でマグマオーシャンから固化した岩石が分布する事が明らかとなった。これら事実から考える新しい月の地殻形成過程(マグマオーシャンの固化過程)について紹介する。

August

Summer Vacation

September

2013-09-05 Shoko Tsuda Tokyo Univ. M2 presentation
粉体焼結体の熱伝導率測定実験と微惑星の熱進化計算
 ダストの集積により形成された微惑星は、断熱効果により焼結の過程を経て熱進化したと考えられる。微惑星の熱進化を解明する上で、熱伝導率は重要なパラメータである。しかし、ダスト焼結体の熱伝導率は測定例が少なく、またパラメータ依存性が分かっていない。本研究では、微惑星の熱史の推定に焼結の効果を取り入れることを目的とし、ダストの擬似物質としてガラスビーズを用いて、その焼結体の熱伝導率を真空中で測定した。その結果、空隙率がほぼ一定でネック半径が大きくなるほど熱伝導率が上がる、直線的な関係であることを明らかにした。
2013-09-12 Yusuke Nakauchi Sokendai M2 presentation
C型小惑星含有鉱物における太陽風プロトンの影響
 近年の月探査において、太陽風起源の-OH基やH2Oの存在が明らかになった。このことは、水の蒸発や含水鉱物が変成する程度にまで高温になると考えられている地球近傍小惑星においても、-OH基やH2Oが生成・保持されることを示唆している。しかし小惑星において、月面と同様に-OH基やH2Oが生成するのかは分かっていない。
 本研究では、C型小惑星に存在すると考えられる鉱物に太陽風を模擬した水素イオンビームを当てることにより-OH基やH2O生成が生成されるのかを検証する。
2013-09-26 Ryunosuke Imaeda Tokyo Univ. M2 presentation
月面の火山複合体Marius Hills及びMons Rümkerにおける火成活動
 月の海おける火山複合体は、嵐の大洋にあるMarius Hills及びMons Rümkerのみであり、月の火成活動史を解き明かす上で重要な鍵の一つである。
 これらの火山複合体の分光画像によると、周囲の海の玄武岩と物質的に類似するものから異なる様相を示すものまで幅広い特徴が観察され, 火山複合体が海に比べてより多様なマグマ活動で形成した証拠であると考えられる。本研究では、月の熱史における火山複合体の形成史に制約を与える事を目的とし、Marius Hillsのより正確な形成年代の推定及び、Mons Rümkerに関しては初めて形成年代の推定を行った。結果、Marius HillsとMons Rümkerにおける最も最近の火成活動はそれぞれ2.32Ga及び1.5Gaである事が明らかになった。この結果は、Marius HillsとMons Rümkerが後期Eratosthenianにおける噴出活動と密接に関わっている可能性を示唆している。
 本発表では、これらの結果を整理した上で考察を行い、修論に向けた議論の整理をする事を目標とする。

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