Solid Planetary Science Group Seminar
FY2012 second half

@ISAS A-5F conference room

固体惑星セミナー憲章

October   -   November   -   December   -   January   -   February   -   March

October

2012-10-04 Hajime Hayakawa JAXA presentation
BepiColombo Project - ESA-JAXA joint mission to Mercury -
ベピコロンボプロジェクト - 日欧協力による水星探査計画 -
紀元前から知られる水星は、 「太陽に近い灼熱環境」と「軌道投入に要する多大な燃料」から周回探査は困難であった。 過去の探査は、2011 年 3 月に米国 MESSENGER が周回軌道に入るまでは、 同衛星の 3 回 (2008-2009)、米国マリナー 10 号による 3 回のフライバイ観測 (1974-5) のみであった。これらの探査は、 この小さな惑星にはあり得ないと考えられていた磁場と磁気圏活動の予想外の発見をもたらしたが、 その究明は 30 年以上続く夢に留まってきた。 耐熱技術の進展に代表される技術革新が、ようやく大きな壁を取り除きつつある。
 「ベピ・コロンボ (BepiColombo)」は、 欧州宇宙機関 (以下、ESA)との国際分担・協力によりこの惑星の磁場、磁気圏、内部、 表層を初めて多角的・総合的に観測しようとするプロジェクトである。 固有磁場と磁気圏を持つ地球型惑星は地球と水星だけで、 初の水星の詳細探査=「初の惑星磁場・磁気圏の詳細比較」は、 「惑星の磁場・磁気圏の普遍性と特異性」 の知見に大きな飛躍をもたらす。 また、磁場の存在と関係すると見られる巨大な中心核など水星の特異な内部・表層の全球観測は、 太陽系形成、特に「地球型惑星の起源と進化」の解明に貢献する。
 本計画は、観測目標に最適化された 2 つの周回探査機、 すなわち表面・内部の観測に最適化された「水星表面探査機 (MPO)」(3 軸制御、低高度極軌道)、 磁場・磁気圏の観測に最適化された「水星磁気圏探査機 (MMO)」(スピン制御、楕円極軌道) から構成される。ISAS/JAXA は、日本の得意分野である磁場・磁気圏の観測を主目標とする MMO 探査機の開発と水星周回軌道における運用を担当し、ESA が残りの全て、 すなわち、打ち上げから惑星間空間の巡航、水星周回軌道への投入、MPO の開発と運用を担当する。
 本計画の現状、目指す水星での科学等について紹介をする。
2012-10-18 Makoto Hareyama JAXA presentation
月面の高速中性子分布
月の核ガンマ線分光観測は、月面上の元素組成を明らかにすることができる。 月面から放出される核ガンマ線は、 銀河宇宙線が月面で作り出した中性子が月物質中の原子核を衝突によって励起させることで生成され、 核ガンマ線強度は中性子強度に依存する。 したがって、月の核ガンマ線分光では、月からの中性子を同時に観測することが重要である。 また、その中性子強度は、月面物質の原子の平均質量数を反映することが知られている。 月探査衛星「かぐや」に搭載されたガンマ線分光計 (KGRS) は、 月面の元素組成を明らかにするため月の核ガンマ線を観測した。 KGRS は高純度 Ge 検出器を使用しており、ガンマ線だけでなく中性子も同時に検出が可能である。 そこで、本研究では高純度 Ge 検出器を用いた速中性子解析法を開発し、 月の速中性子分布を導出した。発表では、速中性子分布の推定法、 得られた速中性子の月面分布および速中性子分布から推定される平均原子質量数分布について報告する。

November

2012-11-01 Tatsumi Arimoto Tokyo Univ. M2 paper reivew
L. T. Elkins-Tanton and T. L. Grove, Water (hydrogen) in the lunar mantle: Results from petrology and magma ocean modeling, Earth and Planetary Science Letters, 307 (2011), 173-179.
月試料中の水・水酸基の測定を行うことで、月内部のマグマのソース領域には数十〜数百 ppm の水が存在したと報告されてきた。著者らはマグマオーシャンの分別固化モデル計算を行い、 10〜200 ppm の水を持つソース領域を作るためには、バルクとしてマグマオーシャンは 100〜1000 ppm、 またはそれ以上の水を保持しなければならないことを示した。 そこでより正確な月内部の水の存在量を推定するための新たな制約条件として、 マグマの分別固化過程で最終的に液相に富む KREEP の考慮、 または月玄武岩中の金属鉄との熱力学平衡などの考慮が必要であると指摘しており、 考慮した結果マグマオーシャンは 100 ppm 以下の水を含んだという結論を出した。 また、斜長岩地殻形成以前のマグマオーシャン固化初期に十分な水素分圧が存在したために マグマが水を保持できたという可能性について議論し、 これまでの月試料測定に対して水酸基・水に加え水素を再評価する必要があると提案している。
2012-11-01 Yutaro Kuriyama Tokyo Univ. M2 paper review
G. R. Osinski, L. L. Tornabene, and R. A. F. Grieve, Impact ejecta emplacement on terrestrial planets, Earth and Planetary Science Letters, 310 (2011), 167-181.
衝突クレーター形成は固体惑星表面形成の原因の最も基礎的な過程の一つであり、 中でもエジェクタ生成過程と分布は十分に理解されていない現象のひとつである。 本論文では、 地球や月、そしてその他の固体惑星の衝突メルトとエジェクタの分布状態を解析した結果、 それぞれの共通点を踏まえ、エジェクタの生成過程に関する統一的な作業仮説を提唱する。
2012-11-08 Kazunori Ogawa JAXA presentaion
Hayabusa-2 分離カメラ (デジタル系) の開発
Hayabusa-2 では、小惑星近傍で弾丸発射装置 (SCI) を分離し、 母船が安全圏に退避した後に小惑星上へ弾丸を撃ち込む衝突実験を実施する。 この際、母船の退避運動の途中で、SCI から 500 m 程度遠方の位置に小型可視カメラ (DCAM) を分離して残しておき、衝突の様子を詳細に観測することを計画している。 本発表では、DCAM のうちデジタル系と呼ぶ高空間分解能で観測を行うコンポーネントについて、 理学目標を紹介した上で機器開発の状況を報告する。
2012-11-15 Yuzuru Karouji JAXA presentation
JAXA 惑星試料受入れ設備クリーンルームの化学環境評価について
JAXA 惑星物質試料受入れ設備では「はやぶさ」によって持ち帰られたイトカワ試料の回収が継続的に実施されている。 また、今後予定されている「はやぶさ 2」などのサンプルリターンミッションにも対応することが求められている。 惑星物質試料研究における隕石試料に対するリターンサンプルの有用性として、 試料採集地点が既知であること、地球環境による汚染をコントロールすることが可能なこと、 などが挙げられる。 特に地球環境による汚染のコントロールは重要課題に挙げられる。 リターンサンプルの地球環境汚染に関わる一因としてクリーンルーム内の化学的環境が挙げられるため、 本発表では本設備の環境評価試験の結果を報告するとともに、試料汚染のコントロール方法について紹介する。
2012-11-22 Masayuki Uesugi JAXA presentation
キュレーション施設における研究活動について
JAXA 惑星物質試料受入れ設備 (以降キュレーション) では、 「はやぶさ」によって持ち帰られたイトカワ試料の回収が継続的に実施されている。 今年度に入ってからキュレーションにおいて独自セミナーが始まり、 試料の回収作業の他におのおのが研究履歴、手法をフィードバックしながら、 イトカワ試料に対する研究開発を開始している。 本発表ではキュレーションにおける研究活動をの概要を紹介し、 そのうちイトカワ試料の鉱物組成の分析、その手法開発の内容を報告する。 また、そのほか発表者がキュレーションにおいて行っているその他の技術開発についても簡単にレビューする。
2012-11-29 Jun Takita Tokyo Univ. D1 paper review
O. Groussin, J. M. Sunshine, L. M. Feaga, L. Jorda, P. C. Thomas, J.-Y. Li, M. F. A'Hearn, M. J. S. Belton, S. Besse, B. Carcich, T. L. Farnham, D. Hampton, K. Klaasen, C. Lisse, F. Merlin, and S. Protopapa, The temperature, thermal inertia, roughness and color of the nuclei of Comets 103P/Hartley 2 and 9P/Tempel 1, Icarus, (2012 in press).
ディープインパクト探査機がテンペル第一彗星の探査 (2005 年) に引き続き、 2010 年に近接撮像に成功したハートレイ第 2 彗星の表面特性に関する論文である。 数枚の静止画像から推定した表面温度や熱慣性および表面ラフネスについての記載がある。 ここでは熱赤外撮像装置である HRI-IR (1.05-4.8 μm) と HRI-VIS (可視撮像装置) で取得した画像の併用がなされている。 表面温度分布など天体上で空間分布を持つデータの再現に関して、 形状モデルを考慮した数値計算 (熱モデル) でラフネスを適切に考慮しない場合に生じる問題点につい て具体的な説明があり、 さらに小天体の表面ラフネスの取り扱いに関して著者らが現在開発しつつある新手法 (フラクタルを導入したアルゴリズムによる模擬表面の作成) についても簡単な記載がある。 これらの結果および手法に関する知識は TIR 関係者にとっては特に有用なものと思われる。
2012-11-29 Ryunosuke Imaeda Tokyo Univ. M1 paper review
M. S. Robinson, J. W. Ashley, A. K. Boyd, R. V. Wagner, E. J. Speyerer, B. Ray Hawke, H. Hiesinger, and C. H. van der Bogert, Confirmation of sublunarean voids and thin layering in mare deposits, Planetary and Space Science, 69 (2012), 18-27.
これまで月の海の玄武岩流の厚みの制約はあまり為されていない。 その理由は月面表層が風化されて遊離した物質が表層の層序を混合し, 厚みを不明瞭とするためである。 ところが SELENE (かぐや) によって月面の海内に初めて縦孔が発見された事で、 海内部に比較的風化を受けていない地層断面が露出している事がわかった。 そこで著者らは縦孔断面を調べるために、SELENE が発見した 3 つの縦孔に対し Lunar Reconnaissance Orbiter (LRO) の高解像度 (>50 cm/pixel) カメラを用いて様々な角度で撮像を行った。 その結果 3-14 m の厚みをもつ複数の溶岩流が何十にも流れ、 数十から数百 m の厚みの海を形成した事を明らかにした。

December

2012-12-06 Kiyotaka Ito Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) かぐや搭載マルチバンドイメージャ (MI) による KREEPy 岩層の推定
液相濃集元素である Th、K は地球型惑星内部における熱源としての役割を担うため、 その分布は地球型惑星の熱史を遡る上で非常に有用な情報となる。 かぐや衛星等による月表層からのガンマ線の観測によって、 月面 Th・K の濃度分布が知られており、 その分布が一様ではなく局所的に高濃度を示す領域が存在することが分かっている。 ガンマ線観測では空間分解能が 40 km 程であり、 それにより対応する地質ユニットを同定するのに限界がある。 そこで本研究では、 かぐや搭載マルチバンドイメージャで取得した高空間分解能である可視近赤外画像を用いる。 ガンマ線の観測により KREEPy 岩が露出していると考えられる Aristillus クレーター (直径 55 km) 及び、Copernicus クレーター(直径 93 km) 周辺に注目し、 鉱物組成の分布やその産状からクレーター周辺の地質ユニットと KREEPy 岩との対応付けを試みた。
2012-12-06 Yamato Horikawa Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 月惑星熱流量精密観測に向けての伸展式プローブの開発
月惑星での地殻熱流量は、 惑星・衛星内部の温度分布や熱進化の歴史を推定する上で大きな制約条件となる。 これまでの熱流量計は、 地下に埋設させ直接測定を行うぺネトレータなどの貫入プローブに搭載されてきた。 しかし、これまでの貫入プローブには構体表面上にヒーターやセンサーが搭載されているため、 埋設時の周りのレゴリスへの圧密の影響や、 レゴリスと貫入プローブの熱伝導率の違いによる熱屈折の影響を受けやすく、 惑星本来の熱流量値を求めるのに不確定性を有している。 そこで本研究では、貫入プローブの側面から細いプローブを伸展させることで、 圧密や熱屈折の影響の少ない条件を実現し、 高精度 (測定精度 5-10% 程度)で熱流量計測が可能な計測システムを検討している。 今回は測温点がヒーターのどの位置にあっても適用できる、 ヒーターを加熱させたときの温度上昇率から熱伝導率を推定する理論解を用いて、 より精密な熱流量の測定精度についての考察を試みた。
2012-12-13 Maho Ogawa Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 熱伝導率を変化させた場合の微惑星の熱進化
微惑星は原始太陽系星雲ガスから凝縮したダストの集まりであるため、 porous な構造になっている可能性がある。 過去、多くの隕石母天体の熱進化の計算が行われてきたが、 隕石母天体集積以前の微惑星の段階での熱進化についてはほとんど考えられてこなかった。 集積初期の微惑星ではその熱伝導率の低さから内部温度がかなり高くなることが予想される。 本研究では、集積初期の微惑星を µm サイズの粉体の集合体と考え、 粉体熱伝導率測定の最新の結果を用いて微惑星の熱進化を計算する。 前回は微惑星の熱伝導率は計算期間中全球で一定として計算した結果を発表したが、 熱伝導率には温度依存性があるため、 今回は微惑星の内部温度変化に伴う熱伝導率の変化を考慮した計算結果を発表する。
2012-12-13 Yutaro Kuriyama Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 月面クレーター中央丘上の衝突メルトの存在の検証と中央丘形成のタイムスケール制約 (仮)
衝突クレーターの中央丘の形成過程の理解は不十分であり, 衝突メルトの分布や産状などから中央丘形成のタイムスケールの制約が試みられてきた. 今まで,衝突メルトは主にクレーターのフロアーや周辺に存在するとされ, 中央丘の上に分布しているという事例やシミュレーション結果は今までほとんど報告されてこなかったが, 最近の研究で中央丘上の衝突メルトの存在がだんだんと明らかになってきた. 中央丘上の衝突メルトの分布や産状について詳しく解析することで, 中央丘形成のタイムスケールについて新たな制約ができる可能性がある. そこで本研究では,100 あまりの月面クレーターの中央丘上の衝突メルトの有無について, かぐやのマルチバンドイメージャのデータを用いたスペクトル解析と, 地形カメラ及び Lunar Reconnaissance Orbiter の高分解能カメラによる組成・形状情報を用いて検証し, その結果から中央丘形成のタイムスケールについて考察する.
2012-12-20 Tatsumi Arimoto Tokyo Univ. M2 presentation
月全球に分布する Dark Mantle Deposit の化学組成と結晶度の推定
月の進化 (マグマオーシャンからの分別固化過程) や月のバルク組成を理解する上で、 月の体積の約 9 割を占める月のマントルの化学組成を知ることは重要である。 月面上には、海の玄武岩とは異なるソースを持つマントル深部のマグマを起源とし、 揮発性物質とともに噴出した火砕性ガラス粒子が堆積している反射率の低い領域 (DMD) が存在する。 そのような火砕性粒子の化学組成や冷却速度・結晶度の決定が必要である。 本研究では、かぐやのマルチバンドイメージャーの分光データをもとに、 月全球の DMD に堆積する火砕性粒子の結晶度と TiO2 量・周囲の海玄武岩との組成関係を推定し、 その結果より推察されるマントル組成の地域的な不均質性を生むメカニズムについても考察する。
2012-12-20 Shogo Yakame Tokyo Univ. M2 presentation
微小隕石試料における衝突変成組織の観察とイトカワ試料との比較
小惑星探査機「はやぶさ」によって持ち帰られた小惑星イトカワ表層物質はこれまで確認されているところ、数 µm ~ 最大で数百 µm のレゴリスリ粒子であった。 初期分析の結果粒子の鉱物組成や酸素同位体比等が LL4 ~ LL6 の普通コンドライト の値と非常によく一致する結果となり、 この結果によって世界で初めてS型小惑星が普通コンドライトの母天体である事が直接的な証拠を持って示された。 また初期分析の結果イトカワは直径 20 km 以上の母天体が存在し、 破壊的な衝突現象によって母天体が壊され、現在のイトカワを形成していることや、 持ち帰られたレゴリス粒子はイトカワ表層での衝突現象 (角礫化作用) の結果破砕された微粒子であることが示唆されている。 これらの事から、イトカワのような小惑星の起源と進化には衝突破壊現象が非常に大きな役割を果たしていることが分かる。 一方で、イトカワ粒子が経験した衝突現象の情報が読み取れる衝突変成組織の観察は、 イトカワ試料の粒子サイズが小さすぎる事から観察が非常に困難となっている。 なぜなら隕石試料に対する先行研究において、衝突組織の観察は mm ~ cm サイズの試料を用いて行われてきたため、 イトカワ試料程度の粒子サイズの試料がどの様に破壊され、 そこにどんな衝突組織が観察されるのか、 また観察された組織がもとの大きな試料の組織を正確に反映しているのかは分かっていない。 そこで本研究では隕石試料を用い、これまでに分析されてきた隕石の試料サイズ (mm) とイトカワ粒子の様な微小粒子 (100 µm 前後) を比較することで、 微小粒子がどの様に破壊を受け、そこにどの様な衝突組織が観察されるのかを調べた。

January

2013-01-10 Yukihiro Ishibashi JAXA presentation
惑星物質試料の汚染管理 ~試料容器の洗浄~
惑星物質試料受入設備 (キュレーション設備) では、 小惑星探査機「はやぶさ」が 2010 年 6 月に地球に持ち帰った試料を受入れ、 記載、保管、配分 (貸出) 等 (総称して「キュレーション活動」) を行なっている。 この試料は収納容器に守られ、地球にある大気等からの影響をほとんど受けずに地上に届いた。 地球物質による試料の変化や、地球物質の混在は試料の分析値に影響を与える。 キュレーション活動においても、試料を地球物質で汚さないことが重要である。 本セミナーでは、話者が担当している業務の一つ、試料をおさめる容器類の洗浄について紹介する。
2013-01-17 Kei Shirai JAXA presentation
はやぶさ2 DCAM3開発状況
はやぶさ 2 には衝突装置 (Small Carry on Imapctor) が搭載され、 小惑星での衝突実験が実施される。 衝突装置は探査機分離されて秒速 2 km にて、質量 2 kg の銅ライナを発射する。 その衝突の様子は探査機本体から分離された小型カメラにて撮像、 画像の転送がおこなわれる計画である。 この「はやぶさ 2」 分離カメラの開発状況について紹介する。
2013-01-31 Yusuke Nakauchi Sokendai M1 paper review
R. E. Milliken and J. F. Mustard, Quantifying absolute water content of minerals using near-infrared reflectance spectroscopy, Journal of Geophysical Research, 110 (2005), E12001.
はやぶさ2において NIRS3 のサイエンス目標の一つとして、 小惑星表面の水の量を決定することが挙げられている。 今回紹介する論文では、五種類の鉱物を用い 3 µm 付近の吸収特徴を用いることで、 水の量とスペクトルの吸収特徴から算出されたパラメータが非常に良い相関を持つことを示している。 NIRS3 の観測波長において、H2O に由来すると考えられている吸収特徴は大きく分けて 1.9 µm 付近と 3 µm 付近にある。 この実験では、3 µm 領域の吸収特徴を用いた Normalized Optical Path Length (NOPL) と含水量との関係から、 今回の実験データを用いると様々な含水度の鉱物の H2O 量を ±1% 以内で決定できるとしている。 1.9 µm における特徴から算出したパラメータではよい相関は得られていない。

February

2013-02-07 Shoko Tsuda Tokyo Univ. M1 paper review
S. Henke, H. -P. Gail, M. Trieloff, W. H. Schwarz, and T. Kleine, Thermal evolution and sintering of chondritic planetesimals, Astronomy & Astrophysics, 537 (2012), A45.
今までの隕石母天体に対する熱進化モデルは、完全に compact な天体を考えていた。 一方、今回紹介する研究では粉体から成る母天体について考えられており、 粉体の熱伝導率の実測値を用い、熱史の計算を行った。 また、母天体内部の熱進化によって粉体が焼結され、熱伝導率が上昇することも考慮されている。 このモデル計算の結果、60Fe/56Fe の初期値が求まった。
2013-02-07 Naoya Sakatani Sokenda D1 presentation
粉体熱伝導率の応力依存性測定装置の開発と初期結果
レゴリスのような粉体物質の熱伝導率は圧縮応力に依存する。 レゴリス中の深さ方向の熱伝導率変化を推定するためには、この効果は無視できない。 しかしながら、熱伝導率の応力依存性は理論的にはいくつか提案されているものの、 実験的に調査した研究はこれまでなかった。 本研究では、真空下において粉体の熱伝導率を圧縮応力を変化させながら測定できる装置を開発し、 熱伝導率の応力依存性を実験的に初めて決定した。 本発表では、その初期結果を報告する。
2013-02-14 Yusuke Nakauchi Sokendai M1 presentation
C 型小惑星のスペクトル解析に向けて
C 型小惑星はスペクトル特徴の類似から炭素質コンドライトの母天体と考えられている。 炭素質コンドライトに含まれる含水鉱物は、 母天体上での無水鉱物の水質変成により生成したと考えられ、 その生成条件により生成される含水鉱物が異なることを示唆する実験がある。 望遠鏡観測での小惑星の 3 µm 付近での吸収形状の違いは、 この生成物の違いに由来すると考えられている。 発表では、スペクトルの形状判断や、特徴分離、 また本来のスペクトルを変化させる要因について研究として興味あることをまとめた。
2013-02-14 Ryunosuke Imaeda Tokyo Univ. M1 presentation
月面マリウス丘における物質と噴出年代の関係/マリウス丘に関する他最新研究の紹介
月面最大の火山複合体であるマリウス丘の形成年代の推定は、 月の熱進化過程を知る上で必要不可欠である。 マリウス丘には、主体である輝石に富む玄武岩、 一部にかんらん石に富む玄武岩の噴出の痕跡が見られる事が知られている。 本研究では、 かぐやの MI を用いて表層状態及びスペクトル吸収の違いに基づき区分を行った地質ユニットに対し、 TC 画像を用いてクレーター年代学による形成年代の測定を行った。 その結果、 輝石に富む玄武岩とかんらん石に富む玄武岩の噴出年代が有意に異なる可能性を見い出した。 一方で、 従来考えられていたよりもマリウス丘の形成史が複雑である可能性を示唆する結果も得られた。 本発表では、これまで惑星科学会や SELENE シンポジウム等で発表してきた研究をまとめつつ、 LPSC2013 に投稿されたマリウス丘に関する複数の最新の研究をピックアップし、 今後の研究の参考とする。
2013-02-21 Shoko Tsuda Tokyo Univ. M1 presentation
真空下における焼結した粉体の熱伝導率測定
ダストの集結により微惑星は形成されたと考えられている。 ダストの断熱効果により、微惑星は焼結の過程を経て熱進化したと考えられる。 焼結した微惑星の熱進化を考える上で焼結体の熱伝導率は重要なパラメータとなるが、 真空下での測定例はほとんどない。 本研究の目的は微惑星のパラメータを制限するため、 ガラスビーズを模擬物質として焼結体を作成し、 その熱伝導率を真空下において測定する。 本発表では焼結試料の作成方法とその熱伝導率測定方法の検討について報告する。
2013-02-21 Jun Takita Tokyo Univ. D1 presentation
小惑星の表面温度に対する物性の温度依存性の影響と天体の形状や凹凸に起因した自己加熱効果について
小惑星の表面温度の計算においては一般に、 太陽からの距離や自転軸の向きといった幾何学的条件、天体物質の持つ物性、 太陽光の入射条件を決めるための形状モデル、これらを併せた熱モデルで計算がなされる。 計算では偏微分方程式を数値的に解く必要があり、非定常の計算が必要であることから、 物性の温度依存性は考慮されないことが多い。 今回、対象天体を1999JU3での計算条件にした場合において、 温度依存性を考慮した簡単な計算を行ったところ 10 K 程度の影響が見られた。 これは熱慣性の推定に対して無視できない程度と思われる。 また、温度計算においては太陽光の天体表面での反射や散乱による2次的な加熱の効果も無視できないことが近年の米国の彗星探査により指摘されている。 形状モデルでは表面のメートルスケールより細かな凹凸は考慮できないので、 この影響がどの程度になるかについてラフネスを妥当に近似するモデルの構築を目指し、現在検討している。
2013-02-28 Naoya Sakatani Sokendai D1 paper review
H. Tang and N. Dauphas, Abundance, distribution, and origin of 60Fe in the solar protoplanetary disk, Earth and Planetary Science Letters, 359-360 (2012), 248-263.
消滅核種 60Fe は超新星爆発を起こすような大質量星の中で合成される。原始太陽系星雲中における 60Fe の初期存在度は、分子雲コア・星雲の形成過程を探る上で重要な情報である。しかし、先行研究でのこの存在度の推定値はサンプルによって 2 桁近い違いがあり、この事実は 60Fe が星雲中に不均質に存在していた可能性を示唆している。本論文では、様々な隕石を MC-ICPMS を用いて、Fe, Ni の同位体分析を行った。その結果、初期 60Fe 存在度は隕石ごとにほぼ一様であり、60Fe/56Fe = 1.15 × 10-8 という低い値を持つ事が明らかになった。この値は銀河のバックグラウンドレベルと同程度であり、60Fe が超新星爆発によって太陽系星雲に運ばれたという従来の考えとは異なるものであった。

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