Solid Planetary Science Group Seminar
FY2012 first half

Thu. 9:30-12:00 @ISAS A-5F conference room

固体惑星セミナー憲章

April   -   May   -   June   -   July   -   August   -   September

April

2012-04-11 16:00 Junichi Yamazaki NES presentation
第一部: 「かぐや」月探査衛星へのハイビジョンカメラ搭載と運用結果
「かぐや」月探査衛星の広報目的として、 放送用のハイビジョン機材をベースに宇宙環境条件に耐えられる改修を施し、 宇宙搭載用ハイビジョンカメラシステムを完成させた。 このカメラによって、月の地平線から昇る「満地球の出」や、 月食時に起きた「地球のダイヤモンドリング」を世界で初めて撮影することに成功した。 カメラは、衛星の制御落下までの1年8ケ月の間に1度だけメモリ・データが反転する画像不良が発生したが、 動画と静止画を合わせて 6.3 TB の映像を取得できた。 これにより改修や運用を適切に行えば、放送用機材でも真空宇宙の環境で十分使用できることが実証できた。
第二部: 「かぐや」搭載ハイビジョンカメラの CCD 白傷の環境依存性ならびに低減のための運用方法の研究
宇宙放射線の影響によりテレビカメラの CCD に白傷が発生する問題について、 カメラの環境条件と動作条件を変えてデータを取得し、 カメラの映像出力信号の中で白傷レベルを下げる運用条件を研究した。 また、月周回軌道上で発生した白傷について長期間のレベル変化を調べた結果、 発生する白傷とほぼ同数の傷にレベルの低下が観察された。 レベルが低下する傷では感度の劣化は見られず、一部の傷が回復する可能性が見出された。
2012-04-26 Satoshi Tanaka JAXA presentation
太陽系科学研究系-固体惑星グループの概観
2012-04-26 Ryunosuke Imaeda Tokyo Univ. M1 presentation
赤外放射計による熱慣性推定に関する実験的研究
「熱慣性」は密度, 比熱, 熱伝導率の関数として定義され, 物体表面の温度変化に影響を与えるパラメータである. 逆に言えば熱慣性の推定は物体の温度変化を捉える事で可能となる. 月のレゴリスの様な細粒体は約 50 [WK-1m-2s-1/2] と小さく, 小惑星の様な岩体では約 600 [同上] 程度と大きい. 熱慣性を高精度に推定する事で, 天体表層物質の詳細な物性評価や天体表面の熱放射による YOAP 効果に起因する詳細な軌道進化を知る事が可能である. はやぶさ2では中間赤外カメラ TIR (Thermal Infrared Radiometer) を用いて小惑星 1999JU3 の熱放射分布に基づく熱慣性の推定を行う事になっており, 1999JU3 の表面物性や軌道進化の詳細が明らかになるだろう. 本研究では, 探査機本体の影に起因する小惑星表面の急激な温度降下を想定し, 物性値が既知である標準試料に与えた温度変化から熱慣性を推定する室内実験を行った. 今回は大気中での実験であったが, 自然対流が悪影響を及ぼすと予想された大気中であっても, 熱試験が有効であることが示唆された.

May

2012-05-10 Shoko Tsuda Tokyo Univ. M1 presentation
未知の太陽系第9惑星 (惑星X) の探査
海王星以遠に存在する太陽系外縁天体は、 形成当時は黄道面上を円軌道で公転していたと考えられる。 しかし、それらの中には大きな離心率や軌道傾斜角を持つ天体が存在する。 近年、海王星以遠に地球サイズの惑星 (惑星X) を仮定すれば、 この軌道分布を説明できることが分かった。 そこで本研究では新惑星の発見に向けて木曽観測所の 105 cm シュミット望遠鏡を用いて 17 夜にわたる広域撮像観測を行った。 約 23 平方度を解析した結果、新惑星の発見には至らなかったが、既知の小天体を 7 天体検出した。 低黄緯領域を観測した先行研究と比較した結果、 本研究での手法は高軌道傾斜角の天体を効率的に検出できることが確認された。
2012-05-10 Yusuke Nakauchi Sokendai M1 presentation
はやぶさ2 NIRS3 搭載予定 InAs リニアイメージセンサの暗出力特性について
はやぶさ2 NIRS3 では、 探査対象である 1999JU3 において近赤外線領域での H2O や -OH に由来する反射スペクトルの吸収がみられることが予想される。 NIRS3 ではチョッパを用いて明出力と暗出力の差分をとることによって、暗出力電圧を消去する。 しかし、搭載が予定されている InAs リニアイメージセンサは宇宙空間での使用経験がなく、 運用において想定されている -80 度での実測データがない。 そのため、低温環境でどの程度の暗出力があるのかを知っておく必要がある。 今回の測定では、Low gain において低温での出力を測定した。 結果として、各ピクセルに性能差があること、 また Low gain では1ショットの積分時間がチョッパ周期で決まってしまうため、 十分な S/N が稼げないことがわかった。 そこで、High gain での運用を想定し暗出力を測定した。 High gain における暗出力ノイズが Low gain における値に比べて大きく、 その増加率はメーカーの報告値よりもよりも大きかったことが分かったが、 High gain にすることによる S/N の増加の効果が大きいことが確認できた。 測定値をもとに、High gain で 1999JU3 を全球サーベイするのに必要な時間を見積もり、 運用計画を考察した。
2012-05-17 Kosuke Kurosawa JAXA presentation
宇宙速度衝撃圧縮珪酸塩の状態方程式 --隕石重爆撃期における初期地球大気剥ぎ取り--
固体惑星/衛星表面に卓越する衝突盆地地形は、太陽系天体が激しい衝突にさらされてきたことを物語る。 衝突による珪酸塩蒸気の発生は太陽系史上の様々な大事件との関連が指摘されている。 本発表ではこのような "衝突蒸気雲" が既存の惑星大気を吹き飛ばす過程に注目する。 天体衝突が起こると地表で高温高圧の珪酸塩蒸気が発生する。 その後の断熱解放によって、蒸気の内部エネルギーが膨張の運動エネルギーに変換され、 直上にある既存惑星大気を加速する。 一部の大気は惑星脱出速度を超える速度まで加速され、宇宙空間に散逸する。 この過程を "Impact erosion" と呼ぶ。 惑星大気散逸量を定量的に評価するためには 衝突天体が持つ運動エネルギーの何割が珪酸塩蒸気の膨張エネルギーに変換されるか、 を知っている必要があるが、 宇宙速度衝突で生成される珪酸塩プラズマ内でのエネルギー分配過程はよくわかっていなかった。 特に衝撃圧縮によるエントロピー増加量が不明であり、 相図上での断熱解放経路が分からないことが大きな問題点である。 そこで我々は大阪大学レーザーエネルギー学研究センターに 設置された核融合研究用の大型レーザー「激光 XII 号」を用いて カンラン石を 〜1 TPa まで衝撃圧縮し状態方程式データを取得し、 温度-圧力-エントロピー図上での Hugoniot 曲線を得た。 このデータと既存の Hugoniot データを元に断熱解放曲線を決定し、惑星大気散逸問題に適用した。 モンテカルロ法を用いた確率論的隕石重爆撃モデルに実験データを組み込み、 初期惑星大気圧、大気のスケールハイトをフリーパラメータにして、惑星大気圧の変遷を解いた。 その結果、原始地球大気圧が < 10 気圧程度であれば、 隕石重爆撃が既存一次大気を吹き飛ばしうることがわかった。 対照的に暴走温室状態にあると予想される初期金星では 分厚い水蒸気大気が "鎧" となり大気散逸を免れる可能性が高い。 この違いは地球と金星の希ガスパターンの違いと調和的である。
2012-05-31 Hiroaki Shiraishi JAXA paper review
Dawn による Vesta ランデブー観測, Science 336 (2012) 684--704.
5/11 発行の Science 誌に掲載された、 Down による小惑星 Vesta の観測に関する6本の論文 を紹介する。
2012-05-31 Tatsumi Arimoto Tokyo Univ. M2 paper review
C.M. Pieters, S. Besse, J. Boardman, B. Buratti, L. Cheek, R.N. Clark, J.P. Combe, D. Dhigra, J.N. Goswami, R.O. Green, J.W. Head, P. Isaacson, R. Klima, G. Kramer, S. Lundeen, E. Malaret, T. McCord, J. Mustard, J. Nettles, N. Petro, C. Runyon, M. Staid, J. Sunshine, L.A. Taylor, K. Thaisen, S. Tompkins, and J. Whitten, Mg-spinel lithology: A new rock type on the lunar far side, Journal of Geophysical Research 116 (2011) E00G08.
2008 年に打ち上げられたインド初の月探査機チャンドラヤーン1号に搭載された 月面鉱物観測装置 Moon Mineralogy Mapper (M3) により得られた スペクトルデータに基づく月の地殻形成の理解に向けた最新の成果の一つを紹介する。 本論文では、月裏側の代表的インパクトベーズンの中でも残存地殻厚が薄い Moscoviense ベーズンの最も内側のリングに、 新たな月の岩石種である Mg-rich なスピネルを含む下部地殻由来の3つの岩石タイプ OOS (高濃度の斜方輝石 (orthopyroxene)、カンラン石 (olivine)、スピネル (spinel)) の露出を確認した。 さらに、この OOS が、斜長岩地殻の下部へのマグマ物質の貫入という 1つ以上のプルトニックなイベントにより形成されたというプロセスの考察を行い、 このプロセスが提供する数 km スケールのマフィックな組成の濃集メカニズムについて議論している。

June

2012-06-07 Toru Yada JAXA presentation
はやぶさキュレーション作業の現況と今後の計画
2010 年 6 月 13 日のはやぶさ再突入カプセル帰還以後、JAXA 惑星物質試料受入設備 (キュレーション設備) では、 イトカワ起源と思われる粒子などの回収・記載・配分を行ってきた。その内容を発表ではレビューする。 はやぶさの帰還させたサンプルコンテナ内のサンプルキャッチャーからの粒子の回収は3つの方法が行われたが、 その内最も粒子が効率的に回収できた、石英ガラス製円盤への落下粒子の回収という方法により、 現在粒子の回収が続けられている。 現在までに三百個以上の 10-300 ミクロンの粒子がキャッチャーより回収されている。 粒子はその元素組成から、 1) 珪酸塩鉱物粒子のみからなるもの、 2) に硫化鉄・鉄ニッケルなどの不透明鉱物を含むもの、 3) 炭素質の粒子、 4) Al 粒子、石英ガラス粒子などの人工物と思われるもの、 の4つのカテゴリーに分けられている。 日本の大学・研究機関から選別をされた初期分析チームに対して、 この内の 70 個弱を 2011 年 1 月より配布した。 この配布により 2011 年 8 月の Science 特集号に代表されるような科学成果が上がっている。 また NASA に対して、ミッション開始当初の覚え書きに基づき、一定量の粒子が配布されている。 さらに 2012 年 1-3 月にかけて、国際公募研究の募集を行った。 国際公募研究評価委員会による評価の結果、採択された研究グループに対して、 この 6 月より粒子の配布を実施する予定である。 その他、今後の計画、キュレーションにおいてその他取り組んでいる研究・開発についても言及する予定である。
2012-06-14 Naoki Kobayashi JAXA presentation
地球自由振動と大気音波
地球自由振動は地球の基準振動である. 地震などによって励起される地震波は基準振動の重ね合わせで表現される. 筆者らは近年地球自由振動を大気を含んだ系に拡張した. 大気の上端では弾性波のエネルギーは宇宙空間に散逸する (放射境界条件). このような系では系の固有振動数は複素数となり,複素数面内で固有値を探す問題となる. この問題を解決するため新たに基準振動を計算する方法を編み出した. 新手法を用いて大気を含んだ地球自由振動を周期 10 秒以上の音波モードに対して計算した. これによって地震波と同様に地震音波を直接計算できるようになった. 我々は宮城-岩手内陸地震に応用し夷隅観測点で得られた圧力変動が良く説明できることを示した. 地震音波の励起は震源の深さに非常に敏感なため地表付近の震源の情報を音波を使って引き出せる道を開拓した.
2012-06-21 Tatsuaki Okada JAXA presentation
はやぶさ2搭載小型ランダー MASCOT の現状
はやぶさ2には小型ランダ MASCOT による表面での探査を行う予定である. これにはカメラ,赤外分光顕微鏡,熱放射計,磁力計が搭載される. MASCOT の開発の現状と科学観測計画についての紹介と議論を行う.
2012-06-28 Yutaro Kuriyama Tokyo Univ. M2 presentation
月面クレーターの中央丘上の衝突メルトからみる中央丘形成のタイムスケール
衝突クレーターの中央丘の形成過程の理解は不十分であり,衝突メルトの分布や産状などから中央丘形成のタイムスケールの制約が試みられてきた. 今まで,衝突メルトは主にクレーターのフロアーや周辺に存在するとされ, 中央丘の上に分布しているという事例やシミュレーション結果は今までほとんど報告されてこなかったが, 最近の研究で中央丘上の衝突メルトの存在がだんだんと明らかになってきた. 中央丘上の衝突メルトの分布や産状について詳しく解析することで, 中央丘形成のタイムスケールについて新たな制約ができる可能性がある. そこで本研究では,Jackson と Tycho の二つの月面クレーターの中央丘の衝突メルトに着目し, かぐやのマルチバンドイメージャのデータを用いたスペクトル解析と Lunar Reconnaissance Orbiter の高分解能カメラ (LROC) による組成・形状情報を用いて検証し, その結果から中央丘形成のタイムスケールについて考察する.

July

2012-07-05 Akito Araya ERI presentation
レーザー干渉計による地震・地殻変動の観測
レーザー干渉計は光の波長を基準とした変位計測法であり、 高分解能で絶対長が計測できるという特長がある。 地震や地殻変動は広いダイナミックレンジ・タイムスケールの地動を伴う現象であり、 レーザー干渉計を用いると 1 台の装置でかなりの範囲をカバーすることができる。 セミナーでは、100 m 基線のレーザー干渉計を用いた伸縮計による歪の観測と、 レーザー干渉式広帯域地震計の開発について紹介する。 後者は、惑星探査への応用も想定している。
2012-07-12 Junichi Haruyama JAXA paper review
M. T. Zuber, J. W. Head, D. E. Smith, G. A. Neumann, E. Mazarico, M. H. Torrence, O. Aharonson, A. R. Tye, C. I. Fassett, M. A. Rosenburg, and H. J. Melosh, Constraints on the volatile distribution within Shackleton crater at the lunar south pole, Nature, 486 (2012), 378-381.
6 月末、MIT の Maria Zuber らは、LRO 搭載高度計 (LOLA) のデータから、 月南極にあるシャックルトンクレータの内部が高い反射率をもっている状態であるという結果を、 Nature 誌に発表した。この内容が Nature 誌の興味を引いたのは、 その結果の解釈が、「シャックルトンクレータに20%もの水氷が存在する」 (かもしれない) という示唆を含むものであったからであろう。 一方で、2008 年に、SELENE の地形カメラによる計測から、 我々は、シャックルトンの底に水は面積比で数%以下、あるいは無い、という結論を導き、 Science 誌に発表している。 我々の結果は誤ったものであったのか?今回の彼女らの発表内容の真偽は?
 Zuber らの論文を核に、月の極の水を巡る話を幅広く紹介し議論してみたい。
2012-07-12 Shogo Yakame Tokyo Univ. M2 paper review
K. L. Robinson, A. H. Treiman, and K. H. Joy, Basaltic fragments in lunar feldspathic meteorites: Connecting sample analyses to orbital remote sensing, Meteoritics & Planetary Science 47 (3) (2012), 387–399.
斜長石質な月隕石に含まれる、玄武岩質なクラストから計算されるマグマの TiO2 含有量と、 Clementine と Lunar Prospector のリモセンデータによる月面の TiO2 含有量に焦点を当てた論文を紹介する。 月の高地由来の斜長岩質な月隕石中には、しばしば玄武岩質なクラストが含まれる。 このクラスは隕石衝突による Mare からの飛来物であると考えられており、これらのクラストは、 Apollo や Luna のサンプリングサイト以外の地点の火成活動の直接的データとして非常に重要である。 これまでのところ Apollo と Luna のリターンサンプルから、Mare Basalt の TiO2 量には二峰性が存在する一方、探査機によるリモセンデータからはその二峰性は認められていない。 そこで著者らは、月隕石中の玄武岩質なクラストを構成する輝石の TiO2 含有量から、 その親マグマの TiO2 含有量を計算した。その結果はリモセンデータから得られた結果とよく一致することが分かり、著者たちはリモセンデータと月隕石から得られたデータを合わせて活用することで、 月隕石中の玄武岩質なクラストの新たな知見 (有用性) について議論をしている。

August

2012-08-24 (Fri) 10:00 Masahiro Ikoma Tokyo Univ. special seminar
系外から見た太陽系の姿
1995 年の発見以来、検出された系外惑星の数はすでに 600 を超える。 さらに最近の宇宙望遠鏡ケプラーは 2000 個以上の惑星候補天体を検出している。 こうした多数の惑星サンプルによって系外惑星の統計的性質が得られ、 他の惑星系との比較によって太陽系を特徴づけられるようになった。 本講演では、最近の系外惑星科学の動向を概観し、特に惑星の起源と内部構造の観点から、 太陽系らしさとは何かを議論する。
2012-08-30 Yamato Horikawa Tokyo Univ. M2 paper reivew
W. S. Kiefer, Lunar heat flow experiments: Science objects and a strategy for minimizing the effects of lander-induced perturbations, Planetary and Space Science, 60 (2012), 155-165.
将来の月熱流量観測において、地下数 m の温度構造に影響を与え、 計測精度を悪化させる要素は事前に最小限にしておく必要がある。 本論文では、その要素の 1 つとして、着陸機や実験装置を覆う耐熱ブランケットが、 埋設された熱流量観測装置に及ぼす影響を最小限にする方法を紹介している。 有限要素法の数値シミュレーションで永久影によるレゴリス温度の振幅 (摂動) を定量化した結果、 深さ 1 m での熱流量観測を 2 年続けて温度摂動を 8% 以下に抑えるには、 永久影から水平方向に 2.5 m 離して装置を埋設する必要があることが分かった。 この結果は赤道域を仮定しているが、さらに筆者は、赤道以外の領域、海と高地、 月と火星の温度環境下での永久影による温度摂動についても議論している。
2012-08-30 Tatsumi Arimoto Tokyo Univ. M2 paper reivew
L.T. Elkins-Tanton and T.L. Grove, Water (hydrogen) in the lunar mantle: Results from petrology and magma ocean modeling, Earth and Planetary Science Letters, 307 (2011), 173-179.
月試料中の水・水酸基の測定を行うことで、月内部のマグマのソース領域には数十〜数百 ppm の水が存在したと報告されてきた。著者らはマグマオーシャンの分別固化モデル計算を行い、 10〜200 ppm の水を持つソース領域を作るためには、バルクとしてマグマオーシャンは 100〜1000 ppm、 またはそれ以上の水を保持しなければならないことを示した。 そこでより正確な月内部の水の存在量を推定するための新たな制約条件として、 マグマの分別固化過程で最終的に液相に富む KREEP の考慮、 または月玄武岩中の金属鉄との熱力学平衡などの考慮が必要であると指摘しており、 考慮した結果マグマオーシャンは 100 ppm 以下の水を含んだという結論を出した。 また、斜長岩地殻形成以前のマグマオーシャン固化初期に十分な水素分圧が存在したために マグマが水を保持できたという可能性について議論し、 これまでの月試料測定に対して水酸基・水に加え水素を再評価する必要があると提案している。

September

2012-09-06 Masahiko Hayakawa JAXA presentation
The origin of the hydrosphere of the Earth
近年、多くの系外惑星の観測により、 ハビタブルゾーンに存在すると思われる惑星も発見され始めています。 軌道半径 (温度) 的にハビタブルでも生命発生または進化の大前提の海ができるとは限りません。 処々の事情より本研究は完結していませんが、 太陽系形成論の延長上で地球の大気と海の起源を論じた先駆的研究だと思っています。 師匠 (水谷仁) の「海を造ってよ。」の軽い一言で四苦八苦して数値計算 (シュミレーションというにはおこがましい) で地球に海をつくりました。 当時、行われていた関連研究の解説も行いますので 27 年前にタイムスリップして頂きます。
2012-09-06 Makiko Ohtake JAXA paper review
L. T. Elkins-Tanton, S. Burgess, Q. Yin, The lunar magma ocean: Reconciling the solidification process with lunar petrology and geochronology, Earth and Planetary Science Letters, 304 (2011), 326-336.
著者らは、月マグマオーシャンの固化過程についてモデル計算を行う事により、 マグマオーシャンの固化時間が取り得るパラメータの範囲で10Ma程度と比較的短いことを示し、 月試料分析から想定される月斜長岩地殻形成年代が 200 Ma程度と長い原因は月試料の年代は マグマオーシャンの固化時間を見ているのではなく、 マグマオーシャン固化後の潮汐力による加熱で同位体年代がリセットされたためであると解釈した。 また、彼らのモデルから想定されるマントルオーバーターンとそれによって引き起こされる マントル内の組成・温度不均一により、 月玄武岩や破砕性噴出物の分析から得られている幅広い組成範囲や、 Mg-suite の成因についても説明ができるとしている。
2012-09-13 Shogo Yakame Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 微小隕石試料における衝突変成組織の観察とイトカワ粒子との比較
小惑星探査機「はやぶさ」によって持ち帰られた小惑星イトカワの表層物質はこれまでの所、 数〜数百マイクロメートルの微粒子であることが確認されている。 初期分析の結果からイトカワ粒子は鉱物の化学組成、鉱物比や酸素同位体比が LL4〜LL6 の普通コンドライトによく一致することが分かっている。 また現在のイトカワよりも大きな母天体が存在し、 衝突による破壊と再集積の過程を経て現在のイトカワを形成していることが示唆されている。 そしてイトカワ粒子の形状から、 小惑星表層での隕石衝突や衝突現象による惑星振動によって粒子が摩耗し、 細粒化されていることも分かってきた。 しかし先行研究ではイトカワ試料のような破砕された微粒子内にどのような組織や特徴が保持されるのか、 より大きな試料のどの様な部分を反映しているのか、 は解っておらず、 イトカワ粒子サイズ以上のスケールで議論を行うことは困難となっている。 そこで本研究は LL6 普通コンドライト隕石のキラボ隕石を用い、 衝突変成組織に焦点を当て研究を行なった。 キラボ隕石の 100 マイクロメートル程度の微粒子と数ミリメートルの粒子の研磨試料を作成し、 それぞれの粒子に観察できる衝突変成組織を顕微鏡観察にて記載し比較を行った。 また研磨試料の顕微鏡観察の他に、 二次電子像を用いて研磨をしていないキラボ隕石の表面観察も合わせて行い、 イトカワ粒子の初期分析における反射電子像やX線CT像のデータとの比較を行なった。
2012-09-13 Yutaro Kuriyama Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 衝突メルトの分布・形状解析による中央丘形成速度の推定
隕石衝突現象は,地球や月,その他の固体天体において重要な地形・地質変性プロセスであり, 衝突によるクレーター形成過程の研究は重要である. 中央丘を伴う衝突クレーターについて,今まで, 衝突メルトが中央丘の上に存在しているという事例はほとんど報告されてこなかったが, 最近の研究で中央丘上の衝突メルトの存在が明らかになってきた. 本研究では月面クレーターの中央丘の衝突メルトに着目し, かぐやの分光データと LROC の高解像度画像により, 衝突メルトの組成・形状情報を用いてメルトの冷却時間を考慮することで, 中央丘形成速度について新たな制約を試みる.
2012-09-20 Yamato Horikawa Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 月惑星熱流量精密観測に向けての伸展式プローブの開発
月惑星での地殻熱流量は、 惑星・衛星内部の温度分布や熱的な形成・進化の歴史を推定する上てで大きな制約条件となる。 これまでの熱流量計は、 地下に埋設させ直接測定を行うぺネトレータなどの貫入プローブに搭載されてきた。 しかし、貫入プローブの構体表面上にヒーターやセンサーが搭載されているため、 埋設時の周りのレゴリスへの圧密の影響や、 レゴリスと貫入プローブの熱伝導率の違いによる熱屈折の影響を受けやすく、 惑星本来の 熱流量値を求めるのに不確定性を有している。 そこで本研究では、貫入プローブの側面から細いプローブを伸展させることで、 圧密や熱屈折の影響の少ない条件を実現し、高精度 (測定精度 5-10% 程度) で熱流量計測が可能な計測システムを検討している。 今回は外径 2 mm、 内径 1.6 mm、長さ 10 cm のステンレス製のパイプ中に、 ヒーター線および熱電対を挿入したニードルプローブを製作した。 そしてその性能評価をするためにガラスビーズを充填した容器に伸展式プローブを挿入し、 測定位置とほぼ同位置を線加熱法によって大気圧及び真空下 (約 0.12-0.17 Pa) で比較測定を行った。
2012-09-20 Tastumi Arimoto Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 月面に分布する火砕性堆積物の化学組成と結晶度の推定
月の進化 (マグマオーシャンによる分化過程) や月のバルク組成を理解する上で、 月の体積の約 90% を占める月のマントルの化学組成を知ることは重要である。 月面上には、マントル深部のマグマを起源とし、 揮発性物質とともに噴出した火砕性粒子が堆積している反射率の低い領域 (DMD) が存在する。 マントルの組成やマントル中の揮発性物質の含有量を知るためには、 そのような火砕性粒子の化学組成や冷却速度・結晶度の決定が必要である。 本発表では、かぐやのマルチバンドイメージャーの分光データをもとに、 月全球の DMD に堆積する火砕性粒子の結晶度と TiO2 量を推定し、 DMD のマグマソースの地域的な均質・不均質性からそれらの成因についても考察する。
2012-09-27 Maho Ogawa Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) 熱伝導率を変化させた場合の微惑星の熱進化
微惑星は原始太陽系星雲ガスから凝縮したものの集まりであるため、 porous な構造になっている可能性がある。 過去、多くの隕石母天体の熱進化の計算が行われてきたが、 隕石母天体集積以前の微惑星の段階での熱進化についてはほとんど考えられてこなかった。 集積初期の微惑星ではその熱伝導率の低さから内部温度がかなり高くなることが予想される。 本研究では、集積初期の微惑星を µm サイズの粉体の集合体と考え、 粉体熱伝導率の最新の結果を用いて微惑星の熱進化を計算する。 本日は、研究のバックグラウンドと、水の含まれない微惑星の熱計算結果について発表する。
2012-09-27 Kiyotaka Ito Tokyo Univ. M2 presentation
(修論中間発表) かぐや搭載マルチバンドイメージャ (MI) による KREEPy 岩層の推定
液相濃集元素である Th、K は地球型惑星内部における熱源としての役割を担うため、 その分布は地球型惑星の熱史を遡る上で非常に有用な情報となる。 かぐや衛星等による月表層からのガンマ線の観測によって、 月面 Th・K の濃度分布が知られており、 その分布が一様ではなく局所的に高濃度を示す領域が存在することが分かっている。 ガンマ線観測では空間分解能が 40 km 程であり、 それにより対応する地質ユニットを同定するのに限界がある。 そこで本研究では、 かぐや搭載マルチバンドイメージャで取得した高空間分解能な可視近赤外画像を用いる。 ガンマ線の観測によりKREEPy 岩が露出していると考えられる Aristillus クレーター (直径 55 km) 周辺に注目し、 鉱物組成の分布やその産状から Aristillus クレーター周辺の地質ユニットと KREEPy 岩との対応付けを試みた。

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