Solid Planetary Science Group Seminar
2011 second half

Mon 9:30-12:00 @ISAS A-5F conference room

Kato, Tanaka, Iwata, Hayakawa, Okada, and Abe Laboratory,
Planetary Science Group,
Institute of Space and Astronautical Science,
Japan Aerospace Exploration Agency.

固体惑星セミナー憲章

October   -   November   -   December   -   January   -   February

October

2011-10-17 13:00 Kiyotaka Ito Tokyo Univ. M2 presentation
(M論中間発表) かぐや搭載マルチバンドイメージャ (MI) による KREEPy 岩層の推定
液相濃集元素である Th、K は地球型惑星内部における熱源としての役割を担うため、 その分布は地球型惑星の熱史を遡る上で非常に有用な情報となる。 かぐや衛星等による月表層からのガンマ線の観測によって、 月面 Th・K の濃度分布が知られており、 その分布が一様ではなく局所的に高濃度を示す領域が存在することが分かっている。 ガンマ線観測では空間分解能が 40 km 程であり、 それにより対応する地質ユニットを同定するのに限界がある。 そこで本研究では、かぐや搭載マルチバンドイメージャで取得した高空間分解能な可視近赤外画像を用いる。 ガンマ線の観測により KREEPy 岩が露出していると考えられる Aristillus クレーター (直径 55 km) 周辺に注目し、 鉱物組成の分布やその産状から Aristillus クレーター周辺の地質ユニットと KREEPy 岩との対応付けを試みた。
2011-10-17 14:00 Taichi Kawamura Tokyo Univ. D3 presentation
アポロ月震データの再解析による月震学の新展開 〜長周期ー短周期合成スペクトルを用いた深発月震の震源パラメータの推定〜
アポロの月震観測によって月でも地震活動が起こっている事が発見されて以来、 その発生機構は大きな謎であった。 これまでも月震の震源機構については研究が行われているが月震計の感度、 観測帯域の制限により、限定的な議論にとどまっていた。 震源機構の考察にはイベントの周波数特性などからコーナー周波数、 マグニチュード、応力降下、解放エネルギーなどの震源パラメータを推定することが重要である。 本研究では短周期、長周期月震計のデータを数値的に合成し、 両方の帯域にまたがる連続スペクトルを用いる事で、 それぞれのデータを独立に扱っていた過去の研究よりも精度よく震源パラメータを推定する事を試みる。 今回は特に深発月震のコーナー周波数の推定をはじめとした、 震源パラメータの推定とそこから得られる発生機構に関する示唆を中心に議論する。
2011-10-28 13:30 @6F Takenori Toyota Tokyo Univ. D3 presentation
微細粒子層の熱慣性: 火星表層地質に関する示唆
惑星表面の地質と熱慣性の値には密接な関係がある。 「リモートセンシングによって観測できる表面温度」と「表層地質」の橋渡しをするのが、熱慣性である。 火星には熱慣性が低い (< 50 tiu) と見積もられている領域が存在する [Putzig et al., 2005]。 この「低い熱慣性」は「表層の粒子が小さい (< 10 µm)」からであると解釈されている [e.g. Putzig et al., 2005; Mellon et al., 2009] が、この解釈の根拠が強固であるとは言い難し。 それは、 1) 火星環境で微細粒子層の熱慣性を実験的に測定した例は少なく、 2) 体積熱容量に関する仮定が非常に大雑把なものであり、 3) 微細粒子でなくとも表層の不均質構造で熱慣性の小ささを説明できる可能性がある [Putzig and Mellon, 2009]、 からである。 そこで本研究では、 1) 火星大気圧下での粒子層の熱慣性を実験的に定量し、 2) 体積熱容量を仮定せずに測定し、 3) 微細粒子層の存在が火星表層で観測されている熱慣性の値を説明可能であるか検証した。 その結果、100 [tiu] 以下の熱慣性を、 小さい (5-10 µm) 粒子で容易に実現する事は出来ないという結論を得た。 火星で非常に小さい熱慣性 (< 50 tiu) を持つ領域は、表層に不均質構造を持つと考えられる。
2011-10-28 15:00 @6F Taichi Kawamura Tokyo Univ. D3 presentation
アポロ月震データの再解析による月震学の新展開
月は地球以外で唯一の多点ネットワークによる地震観測が行われた天体である。 月の地震、月震の研究はアポロで月震データが得られて以来、月の内部構造の推定を中心に進められてきた。 アポロ以降、月震観測は行われておらず、アポロ月震データは今なお、 月科学に置ける最も重要な観測データの一つである。 一方で、アポロの月震観測には観測点数の少なさや観測点が全て月の表側にあること、 観測した周波数帯域が狭いなど様々な制約があり、 月震、月内部 構造について、未だ十分な理解が得られていない部分も多い。 本研究では様々な角度から月震データを見直す事でアポロ月震データを用いた月震学について再検討する。 アポロ月震データを用いた新たな月震学として以下の3つのテーマについて議論する。 1. アポロ月面重力計を用いて拡張したアポロ月震ネットワークを用いた震源の再決定、 2. アポロ短周期ー長周期月震計データを合成し、 観測帯域を拡張した月震波スペクトルを用いた月震の周波数特性に関する研究、 3. 月面衝突記録としての月震データ: アポロ月震データを用いた月面クレーター生成率不均質に関する研究。 本発表では主に2の研究の中から深発月震の震源パラメータについて議論する。

November

2011-11-07 Naoya Sakatani Titech M2 paper review
P.N. Peplowski, L.G. Evans, S.A. Hauck II, T.J. McCoy, W.V. Boynton, J.J. Gillis-Davis, D.S. Ebel, J.O. Goldsten, D.K. Hamara, D.J. Lawrence, R.L. McNutt Jr., L.R. Nittler, S.C. Solomon, E.A. Rhodes, A.L. Sprague, R.D. Starr, and K.R. Stockstill-Cahill, Radioactive Elements on Mercury's Surface from MESSENGER: Implications for Planet's Formation and Evolution, Science 333 (2011) 1850--1852.
水星はテクトニックな活動がなく、初期地殻形成の記録をほぼ完全に残しているため、 その形成と進化を知ることは、比較惑星学上重要である。 また、水星の特徴として、その大部分を占める大きなコアの存在が挙げられ、様々な進化モデルが提唱されている。 本論文では 2011 年 3 月に水星の周回軌道に入った MESSENGER のガンマ線検出器のデータを用いて、 水星北半球の表層の K, Th, U の存在度を推定した。 その結果、観測された K/Th 比 (∼ 5200 ± 1800) は月よりも高く、 他の地球型惑星のそれと同程度であった。 本論文ではいくつかの水星形成・進化モデルで予測された K, Th, U 存在度、 またはそれらの比と観測結果を比較し、モデルの制約を行った。
2011-11-07 Shogo Yakame Tokyo Univ. M1 paper review
6 papers in Science 333 (2011) 1113--1131: T. Nakamura et al., Itokawa Dust Particles: A Direct Link Between S-Type Asteroid and Ordinary Chondrites; H. Yurimoto et al., Oxygen Isotopic Compositions of Asteroidal Materials Returned from Itokawa by the Hayabusa Mission; M. Ebihara et al., Neutron Activation Analysis of a Particle Returned from Asteroid Itokawa; T. Noguchi et al., Incipient Space Weathering Observed on the Surface of Itokawa Dust Particles; A. Tsuchiyama et al., Three-Dimensional Structure of Hayabusa Samples: Origin and Evolution of Itokawa Regolith; K. Nagao et al., Irradiation History of Itokawa Regolith Material Deduced from Noble Gases in the Hayabusa Samples.
今回の論文紹介では今年 8 月 26 日に Science 誌にて掲載された イトカワ粒子の初期分析結果をまとめた6つの論文を総括して紹介する。 分析結果より S 型小惑星イトカワの粒子は LL4-LL6 の普通コンドライト隕石の特徴 (鉱物組成や酸素同位体比) が酷似していることがわかり、 S 型小惑星と普通コンドライト隕石を結ぶ直接的な証拠となった。 また TEM 分析から見つかった小惑星イトカワの表層物質が受けた宇宙風化の痕跡、 希ガスの分析より理解されたイトカワ表層物質のライフタイムやイトカワ自身の寿命 (1 億年 〜 10 億年) 等、 小惑星イトカワの表面物質の特徴とイトカワ自身の全体像が明らかにされた。
2011-11-14 Kisara Uemoto Tokyo Univ. D1 presentation
月 SPA 盆地の地質構造からみる月内部組成
月裏側にある South Pole-Aitken 盆地 (SPA盆地) は、巨大衝突により形成されたと考えられている。 同盆地ではこの衝突により、表面の地殻が剥ぎ取られ、下部地殻やマントルが露出していると考えられてきた。 そのため同盆地は月の起源の解明に繋がる月内部の元素・鉱物組成を直接的に把握するのに 最も重要な地域の一つであるとされている。 本研究では、かぐや搭載の MI のデータよりこの盆地内の岩石・鉱物分布を調査、 また、同じくかぐや搭載 LALT データより盆地内の地形を調査し、 両者を照らし合わせることにより盆地の地質構造を把握、盆地形成時の掘削領域や深度を推算して、 月内部物質露出領域を限定することを目的としている。 今回は、これまで調査してきた SPA 盆地内部の斜長岩 (地殻物質) の分布に加え、 その他のマフィック鉱物の分布や種類を調査し、地形的特徴と照らし合わせた。 その結果、盆地の中心部にインパクター衝突時に地盤が溶融したことで形成された SPA 盆地の 'impactmelt pool' が存在すること、また、 これまでクレータースケーリング則より推測されていた 'impactmelt pool' の領域が実測からも推測できた。
2011-11-21 Kazunori Ogawa JAXA presentation
小型筐体用の高断熱 MLI の開発
月面は昼夜で温度が -200 〜 120 ℃ 程度変化する厳しい温度環境のため、 機器の熱設計が重要な課題となる。 着陸機上に搭載する外部露出型の小型観測機器などには、 筐体と月面との輻射結合を抑えるため、 従来より高断熱の多層断熱膜 (MLI) が必要である。 本研究では、10 x 20 cm 程度の筐体を断熱するため、 小型でありながら高断熱性能 (実効輻射率 ε* < 0.03) を持つ MLI の実現を目的とし、 方式の検討・試作・熱性能評価試験を行った。 MLI は一般に小型化によって断熱性能が悪化するが、 従来の縫い目、ベルクロ留めなどを最小限に抑えた新しい方式により、 面平均 ε* ∼ 0.01 の性能を達成した。
2011-11-28 Kiyotaka Ito Tokyo Univ. M2 presentation
かぐや搭載マルチバンドイメージャ (MI) による KREEPy 岩層の推定
液相濃集元素である Th、K は地球型惑星内部における熱源としての役割を担うため、 その分布は地球型惑星の熱史を遡る上で非常に有用な情報となる。 かぐや衛星等による月表層からのガンマ線の観測によって、 月面 Th・K の濃度分布が知られており、 その分布が一様ではなく局所的に高濃度を示す領域が存在することが分かっている。 ガンマ線観測では空間分解能が 40 km 程であり、 それにより対応する地質ユニットを同定するのに限界がある。 そこで本研究では、かぐや搭載マルチバンドイメージャで取得した高空間分解能な可視近赤外画像を用いる。 ガンマ線の観測により KREEPy 岩が露出していると考えられる Aristillus クレーター (直径 55 km) 周辺に注目し、 鉱物組成の分布やその産状から Aristillus クレーター周辺の地質ユニットと KREEPy 岩との対応付けを試みた。

December

2011-12-05 @6F Yamato Horikawa Tokyo Univ. M1 paper review
S. Byrne, C.M. Dundas, M.R. Kennedy, M.T. Mellon, A.S. McEwen, S.C. Cull, I.J. Daubar, D.E. Shean, K.D. Seelos, S.L. Murchie, B.A. Cantor, R.E. Arvidson, K.S. Edgett, A. Reufer, N. Thomas, T.N. Harrison, L.V. Posiolova, F.P. Seelos, Distribution of Mid-Latitude Ground Ice on Mars from New Impact Craters, Science 325 (2009) 1674--1676.
月惑星探査において、埋設型のプローブの掘削効率や深度などに関わる 表層物質の物理特性を知ることは必要不可欠である。 火星プローブに対する物理パラメータを考慮すると、 レゴリスだけでなく氷の影響も無視できないと考えられる。 本論文では、MRO に搭載された広範囲カメラ (CTX) と高解像度撮像装置 (HiRISE) の観測で、 中緯度地域の新しい衝突クレーターの周りに掘削によって露出した地下の氷を発見した。 異なる季節に撮られた同一地域の画像を比較すると、氷の昇華が起きていたことが分かり、 熱モデルでの検証によって、昇華の程度を制約し、氷の深さや存在形態などの議論を行った。 今後、新しい衝突クレーターをより多く調べれば、 地下の氷の深さ分布や氷内部の物理特性など実際の浅い表層環境 (今回の最大クレーター深さは約 2.5 m) がより把握できるようになると期待される。
2011-12-05 @6F Yutaro Kuriyama Tokyo Univ. M1 paper review
D. Lieger, U. Riller, and R. L. Gibson, Generation of fragment-rich pseudotachylite bodies during central uplift formation in the Vredefort impact structure, South Africa, Earth and Planetary Science Letters 279 (2009) 53--64.
天体衝突の研究において,地球は唯一現地で詳細な地質調査が行われている衝突クレーターが存在し, 月・惑星でのクレーター形成を考える上でも重要な手掛かりを得ることができる. 今回は地球上でもっとも有名であり現存する中で世界最大にして世界最古の衝突構造である, 南アフリカの Vredefort Dome の論文について紹介する. Vredefort 中心部の下層の岩盤には, 溶融岩の一種である破砕物に富むシュードタキライト質の岩塊が多く存在しており, これらの起源と性質について議論されてきた. 本論文ではこの岩塊の包括的な構造解析により, この岩塊が中央丘形成途中の引張応力場によってできた割れ目に メルトシートから貫入して形成されたと考えられることが示されている.
2011-12-12 @6F Ryunosuke Imaeda Titech B4 presentation
はやぶさ2搭載 TIR による小惑星表層熱物性の高精度観測に向けた実験的検討
はやぶさ2では科学観測機器の一つに中間赤外カメラ (Themal Infrared Radiometer, TIR) を搭載し小惑星表面の2次元熱撮像を行う予定である。 自転する小惑星に対して世界で初めて表面温度時間変動の観測により熱慣性を見積もることで、 表層物質の熱伝導率といった物性に関する情報を得る事ができると期待している。 一方で赤外域による小天体のリモート撮像観測の前例は、 テンペル第一彗星に対して NASA のディープインパクトが行ったのみである。 この結果には、いくつかの検討すべき点 (例えば放射率角度依存性、放射結合による面同士の加熱) が挙げられる。 これを踏まえ TIR においても撮像データの正確な補正に向けた検討が必要である。 これらの課題に対し、来年の地上試験における性能評価に向けた予備的な室内実験による検討について議論する。
2011-12-19 Naoya Sakatani Titech M2 presentation
固体天体表層の粒状物質の熱伝導率に関する実験的研究
月や小惑星などの表層は天体衝突による岩石の粉砕物であるレゴリスで覆われており、 真空下においてレゴリスの熱伝導率はインタクトな岩石に比べてオーダーで 2 〜 3 程度低い。 レゴリスの熱伝導率を知ることは、高精度の地殻熱流量観測の実施や レゴリス層の断熱効果を取り入れた隕石母天体の熱進化計算などの観点から重要である。 しかしながら、粉体の熱伝導鵜率は様々なパラメータ (粒径・空隙率・応力・温度など) に依存し、 その値の理論的な推定は現状の理解では容易ではない。 我々はパラメータコントロールがされた粉体の熱伝導率を真空下において測定することにより、 粉体中の熱伝導メカニズムを理解することを目指している。 本発表では過去の粉体の熱伝導率に関する研究のレビューを行い、 本研究で新たに得られた知見を紹介する。また、熱伝導率の測定精度についての考察を行う。

January

2012-01-16 Ryunosuke Imaeda Titech B4 presentation
ステップワイズな温度入力に対する物体表面温変化に基づく熱慣性推定実験
物体表面の温度時間変動から熱慣性値を抽出することで, 物体表面の熱物性を推定する事が可能である. 惑星科学では, 天体表面の温度変化の要因として (1) 自転, (2) 食による太陽光入力の変化あるいは遮断が考えられ, 月や土星の環等に対してこの現象を利用した熱慣性推定•熱物性推定に関する研究が報告されている. 応用例として, はやぶさ2では中間赤外カメラにより小惑星の自転に伴う表面温度時間変化 及び探査機自身が作る影の温度変化から表面の熱慣性の推定を行う. 一方, これまでの先行研究では観測環境が真空中のものが大半であり, 対流による影響が大きく精度が得難いと考えられる大気中での研究例は殆ど報告されていない. 仮に大気中において許容誤差範囲内で高精度な観測が可能であると示された場合, 例えば従来の熱真空試験の一部を試験を大気中で容易に実施でき効率化が可能となるため 大気中での精度評価も重要な課題の一つであると認識した. 本研究では (2) の場合に関する一気圧条件下における熱慣性推定実験を行い, 熱電対を用いた実験では ±6%, 赤外線によるリモート観測では ±10% 程度の誤差で熱慣性推定が可能である事を実験的に示した.
2012-01-23 Shogo Yakame Tokyo Univ. M1 presentation
Kilabo (LL6 普通コンドライト隕石) を用いた微小粒子の分析
はやぶさによって持ち帰られた小惑星イトカワの粒子サイズは数十 µm 程度と非常に小さいものであった。 それに対し小惑星から地球に飛来したと考えられている隕石の分析は mm 〜 cm サイズの試料で分析されており、 イトカワサンプルのようなサイズの隕石試料の分析はほとんど行われてこなかった。 しかしイトカワサンプルを分析する上において、 現在まで多くのデータと知識が蓄積されている隕石試料を有効に活用していく事は、 微小量のイトカワサンプルから最大限の科学成果を引き出すために、 またこれまでの隕石試料に新たな知見を与えるためにも非常に重要なことである。 そこで本研究では LL6 普通コンドライトの Kilabo 隕石を衝突変成作用によって作られた組織に注目し詳しい記載を行った後、 同隕石の µm サイズの微小粒子に対しても同様の観点から分析を行い、 µm サイズの試料の持つ組織の記載、微小粒子のショックステージの判別を行い、 コンドリティックな物質が微小サイズになるとどのような組織が観察でき、 どのような傾向が見られるのかを考察した。
2012-01-30 Yamato Horikawa Tokyo Univ. M1 presentation
レゴリスシミュラントの圧密試験による月表層環境の実現
将来の月惑星着陸探査において着陸地点およびその周囲の土壌の機械的な物性は着陸機の設計だけでなく、 観測機器の設計、設置方法に大きな影響を及ぼす。 特に内部構造探査における地震観測や熱流量観測などは 地中に埋設する必要性もあるために表層付近の機械的物性 (硬度、摩擦力など) が重要なパラメータである。 近年では粒度分布や形状を類似させたシミュラントを用いて試験される場合が多いが、 機械物性をコントロールした条件での試験はなされていない、 もしくはかなり異なった条件で実施されているのが現状である。 そこで本研究では粉体の圧縮によく用いられる振動加圧装置で、 シミュラントの機械物性を均質にコントロールすることを試みており、その成果について報告する。 近年 DLR や宇宙研で開発が進められている 着陸機搭載型のペネトロメータの貫入特性や高速貫入型のペネトレータの貫入特性の調査、 SELENE-2 のサバイバルモジュールの開発などに有用であると考えている。

February

2012-02-13 Yutaro Kuriyama Tokyo Univ. M1 presentation
月面クレーター Jackson, Tycho の中央丘上の衝突メルトについて
天体衝突によって生じるメルトは主にクレーターのフロアーや周辺に存在するとされ, 中央丘の上に分布しているという事例やシミュレーション結果は今までほとんど報告されてこなかった. しかし最近,中央丘上に滑らかな領域の存在する月面クレーターが報告され, その後の研究で中央丘上の衝突メルトの存在がだんだんと明らかになってきた. 中央丘の形成のタイミングや地質構造などの理解はまだ不十分であるが, 衝突メルトの分布を知ることは固体惑星のクレーター形成過程を知るうえで重要であり, 中央丘の組成から地殻組成を知る手法にも影響を与える. そこで本研究では,月の裏側高地に存在する Jackson クレーターの主に中央丘の衝突メルトの分布について, かぐやのマルチバンドイメージャのデータを用いたスペクトル解析と Lunar Reconnaissance Orbiter の高分解能カメラ (LROC) による組成・形状情報を用いて検証し, その結果から衝突メルトと中央丘形成過程について考察する.
2012-02-13 Tatsumi Arimoto Tokyo Univ. M1 presentation
Aristarchus Plateau に堆積する Dark Mantle Deposit の化学組成と結晶度の推定
月面には、平滑で反射率の低い Dark Mantle Deposit (DMD) と呼ばれる領域が存在しており、 そこには玄武岩よりも深いマントルのマグマ起源である pyroclastic beads が堆積していると考えられている。 月の進化や起源の情報を含むマントルの組成を知るためには DMD の化学組成の決定が重要である。 また、堆積する beads の化学組成 (特に TiO2 量) を推定することで、 周囲の mare のマグマソースとの関係性を説明することができ、 さらに beads の結晶度を決定することで、 マグマ噴出時の beads の冷却速度の推定につなげることができる。 しかし、これまでの DMD の観測では空間分解能の低さや観測波長域などが原因で、 DMD の詳細な化学組成は正確には検証できていない。 本研究では、かぐや搭載のマルチバンドイメージャーの観測データを用いた画像・スペクトル解析により、 DMD に堆積する beads の TiO2 量と結晶度を、 アポロサンプルとの比較を基に推定した。 今回は、月面の DMD の中でも最も広範囲に分布しており、 比較的最近まで火成活動が続いていたと考えられている Aristarchus 台地に広がる DMD に焦点を当てた。
2012-02-20 Takefumi Mitani @6F JAXA paper review
Brian J. O'Brien, Review of measurements of dust movements on the Moon during Apollo, Planetary and Space Science 59 (2011) 1708--1726.
本論文では、月面でダストの直接観測を行った以下の3つのアポロ実験についてレビューする。 特に、過去の研究では評価がきちんとされていないノイズやコンタミネーションについて吟味を行った。 (i) マッチ箱サイズの 270 g のダスト検出器実験 (Dust Detector Experiments; DDEs)。 アポロ 11, 12, 14, 15 で実施。 1969 年 7 月 21 日から 1977 年 9 月 30 日までの、月面昼間 3000 万回の計測。 (ii) Thermal Degradation Samples (TDS)。 アポロ 14 で実施。 (iii) 7.5 kg の Lunar Ejecta and Meteoroids (LEAM) experiments。 アポロ 17 号で実施。 上記のダスト測定データに関するこれまでの文献と今後のさらなる解析により、 理論的な予測を進めることができ、今後の月や小惑星探査において、 ダストが引き起こす問題への対策を施すことができる。
2012-02-27 Tatsumi Arimoto Tokyo Univ. M1 paper review
C.M. Pieters, S. Besse, J. Boardman, B. Buratti, L. Cheek, R.N. Clark, J.P. Combe, D. Dhigra, J.N. Goswami, R.O. Green, J.W. Head, P. Isaacson, R. Klima, G. Kramer, S. Lundeen, E. Malaret, T. McCord, J. Mustard, J. Nettles, N. Petro, C. Runyon, M. Staid, J. Sunshine, L.A. Taylor, K. Thaisen, S. Tompkins, and J. Whitten, Mg-spinel lithology: A new rock type on the lunar far side, Journal of Geophysical Research 116 (2011) E00G08.
2008 年に打ち上げられたインド初の月探査機チャンドラヤーン1号に搭載された 月面鉱物観測装置 Moon Mineralogy Mapper (M3) により得られた スペクトルデータに基づく月の地殻形成の理解に向けた最新の成果の一つを紹介する。 本論文では、月裏側の代表的インパクトベーズンの中でも残存地殻厚が薄い Moscoviense ベーズンの最も内側のリングに、 新たな月の岩石種である Mg-rich なスピネルを含む下部地殻由来の3つの岩石タイプ OOS (高濃度の斜方輝石 (orthopyroxene)、カンラン石 (olivine)、スピネル (spinel)) の露出を確認した。 さらに、この OOS が、斜長岩地殻の下部へのマグマ物質の貫入という 1つ以上のプルトニックなイベントにより形成されたというプロセスの考察を行い、 このプロセスが提供する数 km スケールのマフィックな組成の濃集メカニズムについて議論している。
2012-02-27 Kisara Uemoto Tokyo Univ. D1 paper review
C.M. Pieters, S. Tompkins, J.W. Head, and P.C. Hess, Mineralogy of the Mafic Anomaly in the South Pole-Aitken Basin: Implications for excavation of the lunar mantle, Geophysical Research Letters 24 (1997) 1903--1906.
月最大の衝突盆地である South Pole-Aitken 盆地の鉱物は、 米国のクレメンタインによる調査から、 かんらん石に富む鉱物も単射輝石 (カルシウムが多い) に富むバサルトも月の裏側で確認されているにもかかわらず、 SPA 盆地の内側に含まれる岩石タイプは、たいへんノリティック (カルシウムが少ない) なものが多い。 この鉱物組成は、SPA 盆地のマフィック鉱物の組成が、マントルより下部地殻のものである可能性を示唆している。 本研究では、クレメンタインのデータを使用し、 SPA 盆地内の地域ごとの鉱物組成を調査し、この盆地のマフィック鉱物の起源を求める。