Solid Planetary Science Group Seminar
2011 first half

Mon 15:00-17:30 @ISAS A-5F conference room

Kato, Tanaka, Iwata, Hayakawa, Okada, and Abe Laboratory,
Planetary Science Group,
Institute of Space and Astronautical Science,
Japan Aerospace Exploration Agency.

固体惑星セミナー憲章

April   -   May   -   June   -   July   -   September

April

2011-04-18 @6F Ken Ishiyama Tohoku Univ. M1 presentation
かぐや衛星観測データに基づいた衝突クレーター周りの誘電率推定
Lunar Radar Sounder (LRS) は月でサウンダー観測を実施し、 地下からのエコーを観測することに成功して、数百メートルの表層構造を観測できた。 地下エコーは、地下に埋まっているレゴリスからの反射と考えられ、 Ono et al., 2009 は様々な海で表層構造を調べた。 しかし、岩相の正確な誘電率が不明のため、 LRS から岩相の厚さを精度よく調べることが困難である。 そこで、月の海の誘電率を推定するために、クレーター内壁に露出した岩相の厚さを調査し、 クレーター形成による表層構造変化モデルを考えた。 今回のセミナーでは、はじめに LRS の簡単な原理を説明をし、 LRS の観測データからわかることを説明する。 その後、月の海の誘電率の推定方法とその問題点について説明する。
2011-04-18 @6F Yamato Horikawa Tokyo Univ. M1 presentation
星なし分子雲の近赤外線撮像観測
星は分子雲内の密度の高い分子雲コアから誕生する。 そして周囲のガスと塵を取りこんで、やがて水素核融合反応を起こすと主系列星となる。 しかし、分子雲の中には主系列星となる前の若い星の存在が確認されていない「星なし分子雲」が存在する。 本研究では、星なし分子雲の一つである L158-2 を対象にして、 若い星の観測に適した近赤外線の撮像観測データに基づいて、 L158-2 における若い星の存在を調査した。 観測領域で近赤外波長の J、H、Ks バンド (~1-2 µm) すべてで測光したのは 225 天体であった。 その 225 天体を分類したところ、若い星の候補天体となる 2 天体を検出した。
2011-04-25 Yutaro Kuriyama Tokyo Univ. M1 presentation
インド・Dhalb 衝突構造の石英衝突組織解析
最近インドで "Dhala 衝突構造" という先カンブリア時代の天体衝突跡とみられる構造が発見された (Pati, 2005)。 この構造は大部分が侵食・風化されてしまっており、衝突クレーターに特徴的な地形を判別することは難しいが、 周辺の溶融岩に含まれる石英から面状変形組織 (Planar Deformation Feature: PDF) や ballen 組織という微細な衝撃変成組織が発見され、天体衝突の決定的な証拠とされている。 しかし、これらの微細な組織の判定は光学顕微鏡観察のみで行われており、 正確な判別に必要な結晶学的な定量解析や電子顕微鏡による高倍率観察が行われていない。 また、これらの解析を行うことで衝突当時の温度圧力条件の推定が可能であるがこれも行われていない。 そこで本研究では Dhala 構造の衝撃石英の微細組織の解析及び高倍率観察により天体衝突由来であることを確認し、 それらの性質についても探っていく。

May

2011-05-09 @6F Tatsumi Arimoto Tokyo Univ. M1 presentation
L6 普通コンドライト HH084 の U-Pb 年代分析と化学的特徴の考察
未分化な小惑星の破片であるコンドライトの研究は、 初期太陽系での微惑星の進化に不可欠である。 コンドライトには、 異なる進化を遂げた母天体同士の衝突・合体の繰り返しにより形成される多種混合角礫岩が存在する。 本研究では、一見多種混合角礫岩のようにも見える L6 普通コンドライト HH084 の角礫岩中にみられる珍しいメルトポケットの様な clastic inclusion の起源を決定するため、 酸素同位体組成、Fayalite-Ferrosilite 解析により、その化学的特徴を確認した。 さらに、SHRIMP (Sensitive High Resolution Ion Micro Probe) を用いた Pb-Pb・total U-Pb アイソクロン法による年代分析から、 clastic inclusionとその周囲の角礫岩の結晶化年代・変成年代を求め、 このコンドライトの形成シナリオを推定した。
2011-05-09 @6F Shogo Yakame Tokyo Univ. M1 presentation
カリフォルニア州「Slate Creek Complex」中の変成枕状溶岩における白雲母による長石の鉱物置換
本研究ではカリフォルニア州シエラネバダ北部に位置する、 ジュラ系の付加帯である「Slate Creek Complex」に産出する変成を受けた枕状溶岩中の鉱物置換に焦点をあてている。 この枕状溶岩のリム部では長石は白雲母に仮晶として置換されているのに対し、 内部では長石はアルバイト化作用によりアルバイトとなっている。 なぜわずか数センチの部位の差でこのような違いが生まれるのか? またどのような変成過程を経て、どのような鉱物 (元素) のやりとりがあったのか? そしてこのリムと内部の違いを作った重要なファクターは何か? ということを明らかにするべく研究を進めた。
2011-05-16 16:00 Yuzuru Karouji JAXA presentation
月隕石 Dhofar 489 は本当に月の裏側から飛んできたのか?
2006 年、武田等は月隕石「Dhofar 489」の詳細分析により、 本月隕石が月の裏側起源であることを報告した。 本論文は、裏側起源の月隕石を初めて特定した極めて重要な論文である。 あれから5年。さらに多くの月隕石が発見され、分析され、報告されてきた。 さらに 2007 年に打ち上げられた月探査衛星「かぐや」による新しい月の常識が形成されつつある。 本発表では、Takeda et al. (2006) を現在の知識を基にレビューし、 Dhofar 489 が本当に裏側起源であったのか、またそのことが今後の月研究にもたらす意義について考察したい。
2011-05-30 Masayuki Uesugi JAXA presentation
南極ドームふじ氷床コア中の極微小スフェリュールの形成過程
南極のドームふじ氷床中のボーリングコアの中から、2つのダストリッチな層が発見された。 この二つの層のうち、とくに DF2691 と名付けられた層には多数の極めて小さな (100 µm-0.1 µm) スフェリュールが含まれており、さらにそれらは数百 µm の集合体を形成している。 本論文では Love and Brwonlee (1991) の数値モデルを発展させた計算を行い、このダストの形成環境を調べた。 この結果、1 µm 以下のダストは、地球に突入する際の速度が極めて大きくないと溶融できず、 さらに太陽系の重力圏での可能な相対速度では溶融できる突入速度を実現出来ないことがわかった。 このことからスフェリュール形成の可能なモデルとして、ダストが単体で大気圏に突入したのではなく、 数 mm 以上の母天体が大気圏に突入して破壊したというモデルの構築を試みる。 また、大気圏突入後の宇宙塵母天体の破壊について、 風洞実験による隕石の破壊実験を行いその結果からこのモデルをより詳細に考察する。

June

2011-06-06 Taichi Kawamura Tokyo Univ. D3 paper review
R.C. Weber, P.Y. Lin, E.J. Garnero, Q. Williams, and P. Lognonné, Seismic Detection of the Lunar Core, Science 21 (2011) 309--312.
月のコアの有無、状態、大きさを定量的に推定する事は月の全球組成や月内部の熱的環境、 熱史などさまざま問題に対する重要な制約となり、月の起源や進化を考える上で不可欠な情報である。 過去に様々な観測からコアの状態の間接的な推定はなされて来たが統一的な見解には至っていない。 本論文ではアポロの月震データを用いてコアからの反射波を探る事でコアの状態に制約を加える事を試みている。 著者らは polarization filter と array-processing method という 地球の地震学で用いられる手法を月震データに適用する事で 月震は特有の強い散乱波の中からコアからの反射波を見いだそうとしている。 その結果、月の中心部は外側から部分溶融層、液体の外核、固体の内核という構造をしていると結論づけた。 今回の論文紹介では著者らが行った手法について解説し、その結果の妥当性について議論する。
2011-06-06 Kiyotaka Ito Tokyo Univ. M2 paper review
N. Yamashita, N. Hasebe, R.C. Reedy, S. Kobayashi, Y. Karouji, M. Hareyama, E. Shibamura, M.N. Kobayashi, O. Okudaira, C. d'Uston, O. Gasnault, O. Forni, and K.J. Kim, Uranium on the Moon: Global distribution and U/Th ratio, Geophysical Research Letters 37 (2010) L10201.
かぐや搭載ガンマ線分光計は高エネルギー分解能を誇り、 月面に存在するウランからのガンマ線を識別可能である。 本論文では世界で初めて月面のウランマップを示し、 ウラン-トリウム比が月の裏側で一様でないことが分かった。 このことから月の高地地殻は一様に形成されていない可能性が示唆された。
2011-06-13 Risa Sakai Tokyo Univ. D1 presentation
月地殻形成条件から制約するマグマオーシャン化学組成
月は厚さ数十 km の斜長岩質地殻を持つことが観測により示されており, このような地殻はマグマオーシャンからの分化過程によって形成されたと考えられている. 月マグマオーシャンの化学組成は,月の熱進化や内部構造を理解する上で非常に重要であるが, 従来の地震波や高地・海の岩石組成を用いた推定値には大きな幅があり,統一的な見解は得られていない. 本研究では月の斜長岩質地殻に対する観測事実から, マグマオーシャン化学組成に制約を与えることを目的とした. 月地殻が形成されるために, (A) 分化したマグマから斜長石が析出し,対流中を浮上分離しなければならない, (B) 月の地殻を作るのに十分な量の斜長石が析出しなければならない, (C) 地殻中の mafic 鉱物の組成を説明できなければならない, という条件から本研究の結果を評価した. これらの考察から, 月マグマオーシャンの化学組成は地球のマントル組成よりも 1.3 倍程度 FeO に濃集している可能性が示された.
2011-06-20 Taichi Kawamura Tokyo Univ. D3 presentation
Cratering asymmetry on the Moon: New insight from the Apollo Passive Seismic Experiment
太陽系の多くの衛星では、自転周期と公転周期が同期しており、常に公転運動の進行方向に同一面を向けている。 この同期回転は衛星表面において、クレータ生成頻度に空間的な不均質を引き起こすことが予想される。 本研究ではこのように理論的に予想されたクレーター生成率不均質が月震データから観測できるかを検証した。 月震観測では 1744 個の隕石衝突が観測されている。 アポロの月震観測は 1) 約8年間の連続観測、 2) 数 m 〜 数十 m と比較的規模の小さな隕石衝突を観測している、 3) 現在の衝突現象を観測している、 という点で月-地球系の衝突現象を知る重要な情報源であると言える。 発表では月震データから見る月面の隕石衝突の分布、それらの不均一性について議論する。
2011-06-27 Makiko Otake JAXA presentation
月高地地殻の化学組成と進化過程
月周回衛星かぐやで得られた分光データを用い、 高地地域に存在する中央丘および盆地放出物の化学組成を求めることにより 高地地殻内部の垂直構造 (組成変化) を推定した。 解析の結果、地下 30 km 程度までの領域では深さとともにマフィック鉱物が減少しており、 かつそれら岩石は従来推定されてきたよりも非常に斜長石に富む斜長岩であること、 またそのさらに下部 (深さ約 50 km 程度まで) まで同様に非常に斜長石に富む斜長岩が連続して存在することが示された。 発表ではこれら観測事実が示唆すること、残された課題を考察する。

July

2011-07-04 Naoki Kobayashi JAXA paper review
K.D. McKeegan, A.P.A. Kallio, V.S. Heber, G. Jarzebinski, P.H. Mao, C.D. Coath, T. Kunihiro, R.C. Wiens, J.E. Nordholt, R.W. Moses Jr., D.B. Reisenfeld, A.J.G. Jurewicz, and D.S. Burnett, The oxygen isotopic composition of the Sun inferred from captured solar wind, Science 332 (2011) 1528--1532.
これまでのところ,惑星物質の酸素の主要同位体の相対存在度には様々な変動があり, 原始太陽系組成を決めることはできなかった. NASA Genesis ミッションが地球に持ち帰った太陽風の酸素同位体を測定したところ, 太陽は地球,月,火星や隕石に比較して大変酸素 16 に富んでいることが分った. 太陽光球面ではリチウム以上の重い元素の同位体比は太陽系の値に保たれていると考えられるので, 太陽系の岩石物質は酸素 16 に対する 17, 18 の相対存在度は 7% ほど富んでいたと結論付けられる. この異常は恐らく最初の微惑星の集積以前に質量に依存しない化学分別作用で作られたものであろう.
2011-07-04 Kisara Uemoto Tokyo Univ. D1 paper review
I. Garrick-Bethell and M.T. Zuber, Elliptical structure of the lunar South Pole-Aitken basin, Icarus 204 (2009) 399--408.
月裏側にある South Pole-Aitken 盆地 (SP-A) は、 月最大かつ最古の衝突盆地である。 この盆地の外形は普通円型であると解釈されるが、 地形、鉄、トリウムから、短軸 2050 km、長軸 2400 km の楕円形であるということが推測された。 地形や、トリウム量、鉄量、マーレバサルトの分布率は全て楕円の北側において高いという偏りもみられている。 また、過去の論文では、巨大盆地のマルチリングの間隔は約 √2 と言われており、 本論で出した SPA 盆地の地形的楕円からおよそ √2 倍の大きさで同じような楕円をその周りに引いたところ、 北側の地形的構造とよく合ったことから、これを盆地の外側リングとし、 インパクターの入射方向は経度 191 度 E から半時計回りに 19 度と推測した。 この盆地の外形を精密に調査することは、その地域の地質や化学、物理学的情報を得ることに繋がり、 そして SP-A の楕円構造とそのスケーリング関係を理解していくことは、 太陽系の他の巨大盆地の形成を理解することに繋がる。
2011-07-11 Yukihiro Ishibashi JAXA presentation
惑星物質試料の汚染管理 ~キュレーション設備での実施例~
Contamination Control for Planetary Samples at JAXA Curation Facility
JAXA の惑星物質試料受入設備 (キュレーション設備) では、 小惑星探査機「はやぶさ」が 2010 年 6 月に地球に持ち帰った試料を受入れ、 記載、保管、管理、配分・貸出等 (総称して「キュレーション活動」) を日々行なっている。 この試料は地球環境による汚染をほとんど受けていないことが特徴である。 それゆえキュレーション活動においては試料の汚染を最低限に抑え、管理することが本質的に重要である。 本セミナーではこの点に着目して、演者が実施している作業や開発中の手法等を紹介する。
2011-07-25 Chisato Okamoto JAXA presentation
分化天体の衝突破壊条件の解明
天体の衝突現象は,惑星系形成を考える上で重要である. 月などの天体表面には多くのクレーターが存在するように, 天体衝突は太陽系において普遍的な現象であると考えられる. 天体の衝突破壊現象を調べるために, 現在まで太陽系で多く観測されている岩石質の小惑星の衝突現象について調べられてきた. 現在まで,大型望遠鏡による地上観測から,小惑星は岩石質天体だけではなく, 鉄成分を持つとされる M-type 小惑星など多数の種類が見つかっている. このような分光学的分類や地上で発見される鉄隕石などから, M-type 小惑星は熱進化により分化した分化天体由来であると考えられている. 分化天体は,短寿命放射性核種の壊変熱により,内部から熱進化した結果, その内部構造は層構造など,複雑な内部構造を持つに至ったとされる. 近年,惑星系形成初期にこのような層構造天体は多数存在した可能性が示唆されている. しかし,これまで分化天体の衝突破壊条件や, その破壊により形成されたマントルやコア物質の放出条件は系統的にはほとんど知られていない. これらの衝突破壊・破片の放出・再集積条件を調べることは, 観測される小天体の多様性や,熱進化した小天体の衝突進化を知る上で重要である. そこで本研究では,分化体模擬試料に衝突実験を行い,その衝突破壊過程を調べ, 分化天体の衝突破壊条件を明らかにする.

September

2011-09-22 13:00 Taichi Kawamura Tokyo Univ. D3 presentation
(D論中間発表) アポロ月震データの再解析による月震学の新展開 (仮)
月は地球以外で唯一の多点ネットワークによる地震観測が行われた天体である。 月の地震、月震の研究はアポロで月震データが得られて以来、月の内部構造の推定を中心に進められてきた。 アポロ以降、月震観測は行われておらず、アポロ月震データは今なお、 月科学に置ける最も重要な観測データの一つである。 一方で、アポロの月震観測には観測点数の少なさや観測点が全て月の表側にあること、 観測した周波数帯域が狭いなど様々な制約があり、 月震、月内部 構造について、未だ十分な理解が得られていない部分も多い。 本研究では様々な角度から月震データを見直す事でアポロ月震データを用いた月震学について再検討する。 アポロ月震データを用いた新たな月震学として以下の3つのテーマについて議論する。 1. アポロ月面重力計を用いて拡張したアポロ月震ネットワークを用いた震源の再決定、 2. アポロ短周期ー長周期月震計データを合成し、 観測帯域を拡張した月震波スペクトルを用いた月震の周波数特性に関する研究、 3. 月面衝突記録としての月震データ: アポロ月震データを用いた月面クレーター生成率不均質に関する研究。
2011-09-22 13:00 Naoya Sakatani Titech M2 presentation
(M論中間発表) 固体天体表層のレゴリス層の熱特性に関する実験的考察
月や小惑星などの表層は天体衝突による岩石の粉砕物であるレゴリスで覆われており、 真空下においてレゴリスの熱伝導率はインタクトな岩石に比べてオーダーで 2 〜 3 程度低い。 レゴリスの熱伝導率を知ることは、高精度の地殻熱流量観測の実施や レゴリス層の断熱効果を取り入れた隕石母天体の熱進化計算などの観点から重要である。 しかしながら、粉体の熱伝導鵜率は様々なパラメータ (粒径・空隙率・応力・温度など) に依存し、 その値の理論的な推定は現状の理解では容易ではない。 我々はパラメータコントロールがされた粉体の熱伝導率を真空下において測定することにより、 粉体中の熱伝導メカニズムを理解することを目指している。 本発表では粒径・温度・応力・粒子組成依存性を調査し、その依存性の原因を考察した。 その結果、真空下での熱伝導率は粒子の接触面積、単位体積中の接触点数、 空隙サイズに強く依存することを示唆する結果を得た。
2011-09-26 Kosuke Kurosawa JAXA presentation
衝撃圧縮による珪酸塩の電離: 珪酸塩の EOS と月形成巨大衝突
天体衝突は内惑星領域の主要構成要素である珪酸塩でさえも蒸発させるほどのエネルギーを供給する。 そのため地球史上の様々な大事件との関連が指摘されている。 本発表ではその中でも特に月形成巨大衝突に焦点をあてる。 これまで惑星形成末期に原始地球に火星サイズの天体が衝突し、 月が形成されたと考えられてきた (巨大衝突仮説 [Hartmann & Davis, 1975])。 ところが数値流体計算による検証の結果、 巨大衝突による月形成は地球ー月系の化学的な特徴である酸素同位体の一致を説明できないことが指摘され [Canup, 2004]、 月の起源研究は再び惑星科学の最重要課題となりつつある [e.g., Wada+, 2006; Pahlevan & Stevenson, 2007; Melosh, 2009; Pahlevan+, 2010; Crawford, 2010; Canup, 2010; Crawford, 2011]。 その中で我々は珪酸塩の EOS の確立を目指して研究を行っている。 近年急速に発達した高強度レーザーを用いた衝撃圧縮技術は、 天体衝突の極限状況 (> 100 GPa, 104 K) を実験室内で模擬し, 珪酸塩の EOS データを取得することを可能にした [e.g., Hicks+, 2006; Kadono+, 2010; Kurosawa+, 2010; Kraus+, 2011]。 我々は Quartz に対する先行研究の結果と自前で取得した Forsterite に対する ∼800 GPa までの EOS データを従来の数値流体計算で用いられている "M-ANEOS" [Melosh, 2007] と比較した。 その結果 (1) M-ANEOS は衝撃圧縮に対するエントロピー上昇量を過小評価していること, (2) 断熱解放中の珪酸塩は激しく電離していること, (3) 断熱膨張中には電子再結合が起こることがわかってきた [Kurosawa+, In revision]。 発表ではこれらの結果が月形成巨大衝突の描像へ与える影響に関して議論したい。