Planetary Science Group Seminar
2006 second half

Fri, 9:00-12:00

Japan Aerospace Exploration Agency
Institute of Space and Astronautical Science
Planetary Science Group
Kato, Fujimura, Tanaka, Iwata, and Hayakawa Laboratory

- Everyone is welcomed -
Mail: ogawa(@)planeta.sci.isas.jaxa.jp

For students: セミナーの心得 (PDF)

October   -   November   -   December   -   January   -   February   -   March


October

October 6 Chikatoshi Honda ISAS/JAXA presentation
月の溶岩地形の形成
非常に寒い日道路にできた氷の上に熱湯を掛け流した場合、 半無限遠まで続いている氷は解けるのか? それとも一瞬だけ熱湯の方が凍るのか (Huppert, 1989)? Huppert (1989) では数学モデルを立ててこの現象について議論してる。 Huppert (1989) のモデルを冷たい地面 (岩石) と熱い溶岩流の間の関係に対して適用した結果を紹介する。
October 13 Yoko Maruyama Tokyo Univ. M2 presentation
月惑星表層蛍光X線観測における粒子サイズ効果
多くの惑星は、 表層がレゴリスと呼ばれる平均粒径が数10ミクロンから100ミクロン程度の砂礫層に覆われている。 しかし、蛍光X線観測において、その観測される強度は表面の凹凸状態によって影響を受けるため、 このような惑星表層は計測に理想的ではない。 本研究では、まず室内実験により、蛍光X線強度の粒度依存性、 位相角依存性、エネルギー依存性などを調べた。 次に、レーザー顕微鏡を用いて、岩石粉末試料の表面凹凸を測定し、 試料表面の凹凸を矩形波でモデル化した、蛍光X線強度のモデル計算を行った。 これらの実験結果とモデル計算との比較を紹介する。
October 13 Hiroaki Shiraishi ISAS/JAXA new paper review
The Moon: A Taylor perspective, S.R. Taylor, G.J. Taylor and L.A. Taylor, Geochimica et Cosmochimica Acta (2006) in press.
巨大衝突説に基づく月の起源とその後のマグマオーシャン仮説による初期進化について、 (主に化学的見地から) 現在の観測・分析事実と照らし合わせた場合の妥当性と問題点を整理する。 特に、90年代に実施されたグローバルマッピング観測、 アポロデータの再解析および月隕石の分析結果を踏まえて、 月の構造やバルク組成 (金属核、揮発性元素、難揮発性元素) に関する 80年代までの見解を再検証するとともに今後の研究に対する示唆や必要な観測項目を提案する。
October 27 Tomoka Inoue Tokyo Univ. M2 presentation
はやぶさ XRS によるイトカワ表層の Ca 及び Fe の最大含有量制約の試み
Okada et al. (2006) では、 1回目のタッチダウンでの6サイトの解析を行った。 Mg/Si = 0.78 ± 0.09、Al/Si = 0.07 ± 0.03であると見積もられ、 イトカワの組成は L か LL コンドライトの可能性がもっとも高く、 H の可能性も否定できないという結論を得た。 本研究では、タッチダウン以外のデータも解析し、 Mg、Al、Si よりも高エネルギー側の Ca や Fe に焦点をあて、解析を行った。 しかし、はやぶさ観測期間中の太陽活動度は予想よりも低く、 また、観測データの S/N 比も非常に低いため、 バックグラウンド強度を考慮する際は、注意深く行わなければならない。 今回の発表では、用いた解析方法と、その結果を紹介する。
October 27 Masatsuna Iwasaki Titech M1 new paper review
A.A. Nemchin, M.M. Whitehouse, R.T. Pidgeon, and C.Meyer, Oxygen isotopic signature of 4.4-3.9 Ga zircons as a monitor of differentiation processes on the Moon, Geochimica et Cosmochimica Acta 70 (2006) 1864-1872.
ジルコンは化学的に安定しており、 過去の情報を安定に保持していると考えることができる。 このためジルコン中の鉛同位体分析による年代測定が盛んにおこなわれている。 また酸素同位体比はそのサンプルが過去にどのような鉱物的な分 化と元素の分別をおこなってきたのかをわずかながら示す。 この論文では、月の角礫岩 (14321) 中の 14 種のジルコン粒子 (それぞれのジルコンは 4.4 〜 3.9 [Ga] まで示し、 U, Th を数 ppm 〜 数百 ppm 濃縮している) の酸素同位体比を測定し、そこから言えることを議論している。

November

November 10 Shota Ono Tokyo Univ. M1 new paper review
M.E. Varela, G. Kurat, and E. Zinner, The primary liquid condensation model and the origin of barred olivine chondrules, Icarus 184 (2006) 344-364
Ubiquitous presence and peculiar texture of Barred olivine chondrules (BOc) in chondrites caught the attention of researchers and, considerable effort has been expensed on unraveling their origin(s). We report on a detailed study of two types of chondrules: the Classic and the Multiple-Plate Type of BOc, and discuss the petrographic and chemical data of their major mineral phases and glasses. Here we extend application of the primary liquid condensation model, that is based on the ability of dust-enriched solar-nebula gas to directly condense into a liquid, to formulate a new model for the origin of BOc. We calculate the chemical composition of the initial liquid droplet from which BOc could have formed and speculate about the physical and chemical conditions that prevail in the specific regions of the solar nebula that can promote creation of these objects.
November 17 Yuki Sarugaku Tokyo Univ. D3 presentation
Numerical Simulation of the Comet 2P/Encke Dust Trail
We have observed Comet 2P/Encke in visible wavelength since 2002 using Kiso 1.05-m telescope and University of Hawaii 2.24-m telescope. The 2P/Encke trail was detected at 5 different epochs, and was successfully observed almost simultaneously with a observation by Spitzer Space Telescope in 2004. We estimated the scattering phase function and the albedo of dust trail particles from the result of the observations, and it was found that the phase function of trail particles was similar to that of the 2P/Encke nucleus rather than tail particles. However, a problem of the assumption for number density of trail particles remained to be discussed further. Recently, we have been performing a numerical simulation of the orbital evolution of trail particles to solve the problem. In this seminar, I will show the progress of the simulation.
November 17 Taku Yamamoto Tokyo Univ. M1 new paper review
Kevin O. Pope, Susan W. Kieffer, and Doreen E. Ames, Impact melt sheet formation on Mars and its implication for hydrothermal systems and exobiology, Icarus 183 (2006)
火星の表面の大部分はインパクトクレーターで覆われている。 よって、もし熱水系 (hydrothermal system) が一般的にインパクトクレーターと関係があるならば、 それらのクレーターは宇宙生命探査における重要な構成要素となる。 この論文では、解析的モデル (Kieffer and Simonds 1980, as modified in Pope et al 2004) を応用し、 小惑星と LP-comet の衝突によるインパクトメルトの volume や thickness を計算することで、 火星の熱水系が受ける影響にアプローチしており、そこから言えることについて議論している。
November 24 Takahiro Iwata ISAS/JAXA presentation
月からの電波天文学
周波数 10 MHz 以下の、いわゆる「電波の窓」より波長の長い低周波電波領域は、 電離層を通過できないために地球上からの観測が不可能であることから、 観測天文学に残された最後の未開拓分野の一つとなっている。 この領域の電磁波は、太陽及び木星をはじめとする太陽系内惑星の電磁現象、 超新星爆発以後の星の物理状態、銀河系内の宇宙線起源や銀河間の磁場の物理など、 宇宙の様々なスケールでの現象を提示しているものと考えられている。 低周波電波観測の困難さは、地上では無論、 地球周回軌道においても地球からの電波雑音の影響を受けることに加え、 波長が長いが故に空間分解能が悪くなることにもある。 例えば口径 30 m の電波望遠鏡で 10 GHz を受信する場合と同じ空間分解能を、 10 MHz で得るためには、基線 30 km の干渉計を必要とする。 このため、宇宙空間においても高度な編隊飛行を要する等の課題がある。 そこで我々は、安定な地盤と地球からの遮蔽を確保できる「月の裏側」に、 大型電波干渉計を建設する長期計画を提案している。 この長期計画の第1段階では、到達可能な地点に小型の技術実証型観測装置を設置し、 なおかつ科学的に意義のある観測システムを構築する必要がある。 そこで我々は、受信周波数を 25-30 MHz 帯とした小型の月面電波天文台を設置して、 月-地球間の電波干渉計観測システムを実現することを提案する。
November 24 Katsuhisa Furuichi Kobe Univ. M2 presentation
月の α 線量のローカルタイム変動を探る
SELENE には α 線検出器が搭載される。 ターゲットにしているのはラドン 222 の崩壊による α 線である。 このラドン 222 はガスであること、半減期が 3.6 日と短いことから ラドン 222 からの α 線量の増加は月表層からのガス放出 (浸みだし) の増加を示すと考えられる。 この α 線量の時間変化に着目すると、 潮汐に関係した周期変動や 1 月日中での変動の可能性が推測される。 本研究では 1 月日での変動に焦点をあてた。 日中では月表層温度は 100 度を超えガスは熱拡散する。 逆に夜間では -100 度以下となり表層にトラップされると考えると ラドン 222 のローカルタイム変動が見られると推測される。 これを確かめる為に Lunar Prospector の観測データを解析し検証する。
November 29 (Wed) Kouta Morizono Tokyo Univ. M2 (Hongo) presentation
格子法による3次元ジャイアントインパクトシミュレーション
現在、ジャイアントインパクトのシミュレーションは主に SPH 法 (Smoothed Particles Hydrodynamics method) で行われているが、 粒子法であるため中心星から離れた場所や長時間計算したときの結果が不鮮明である。 具体的には、ディスクを形成する領域には全体の粒子数の数%しか粒子がなく、 さらにそれらの粒子の広がりはディスクの半径のオーダくらいあるので解像度が低いことが問題である。 また、状態変化により凝縮したときに多くの体積を占めていた気体の粒子が 一気に小さな固体の粒子になってしまう問題もある。 よってこれを改善するために本研究の先行研究である Wada, Kokubo, Makino (2006) により 格子法でのジャイアントインパクトシミュレーションが行われた。 この研究により円盤領域では SPH 法の 10-20 倍の解像度を得ることができ、 円盤領域での詳しい様子をシミュレートすることが出来た。 しかし、一般的な状態方程式である Tillotson の状態方程式を用いていないことや、 さらにシミュレーションにおいて状態方程式に強く依存する部分もあることが分かってきたことから、 さらなる研究が必要であると思われる。 よって本研究では状態方程式に Tillotson を用い、 さらに格子法の計算に精度の高い CIP 法を用いて 3次元のジャイアントインパクトのシミュレーションを行う予定である。 その準備段階としてまず Wada, Kokubo, Makino (2006) の結果と CIP 法で計算した結果を比較する。 そのため、まずは状態方程式はその論文で用いられた式を用い、 今回の発表では3次元のCIP法で計算し得られた結果を発表する。
Novemver 29 (Wed) Akiko Sakamoto Tokyo Univ. M2 (Hongo) presentation
惑星形成終盤における円盤ガスの温度構造
惑星系の母胎である原始惑星系円盤では、 円盤ガスはおよそ 106 年程度のタイムスケールで散逸し円盤から失われると考えられている。 一方で、微惑星同士の衝突・合体によって成長した惑星は、周囲の円盤ガスを重力的に捕獲して、 円盤ガス起源の大気をもつ可能性が考えられる (例えば Hayashi et al., 1979; Nakazawa et al., 1985)。 しかしながら、この段階で惑星の周囲にどの程度の円盤ガスが残っており、 それがどのような温度構造をもっているかということはまだよく分かっていない。 本研究では、散逸によって密度が減少しつつある円盤の温度構造およびその時間進化を推定し、 それが惑星の円盤ガス捕獲に与える影響について明らかにすることを目指す。 今回の発表では、 最小質量円盤の 10-4 倍程度まで散逸した円盤ガスの温度構造について得られた結果を示し 惑星の円盤ガス捕獲における影響について議論する。

December

December 6 (Wed) Mina Saido Tokyo Univ. M2 (Hongo) presentation
相対湿度を考慮した放射対流平衡計算による暴走温室効果の研究
暴走温室状態の発生に関する研究は、 惑星の大気進化や惑星表面での海洋の存在を考える上で重要であり、 今までに多くの研究者たちによって行われてきた。 しかし、惑星放射量を決める要因の1つである相対湿度に関しては、 これまで対流圏中の湿潤対流のメカニズムについてあまり理解されていなかったため、 理論的、定量的な見積もりが正しく行われないままであった。 近年、Iwasa et al.(2002) によって放射のみを用いた画期的な湿潤対流モデルが提唱され、 これにより、放射場から自律的に対流圏での水蒸気分布を求めることができるようになった。 本研究ではこの放射による湿潤対流モデルを一次元放射対流平衡モデルと組み合わせることで、 相対湿度と大気上端での惑星放射量、暴走温室状態発生との関係について議論する。
December 6 (Wed) Kenichi Watanabe Tokyo Univ. M2 (Hongo) presentation
1次元放射対流平衡モデルを用いた海洋の存在条件の検討
液体の水は生命が生存できる惑星 (ハビタブル・プラネット) の重要な条件である。 従来から海洋の存在条件は1次元放射対流平衡大気モデルを用いて調べられてきたが、 90年代初頭以降きちんとした計算は行われていない。 そこで本研究では、 最近の惑星大気研究の成果も考慮に入れて改めて海洋の存在条件を検討し直すことで、 より現実的な「海の形成マップ」を作ることを目標としている。 今回の発表ではそのためのツールである1次元放射対流平衡モデルの作成について紹介する。
December 15 Tatsutoshi Inoue Tokyo Univ. M2 presentation
熱モデルを用いた小惑星イトカワの熱物性の推定
小惑星探査機はやぶさに搭載された蛍光X線分光計 (XRS) は 十分なエネルギー分解能を得るためにX線 CCD のフードがラジエータとして働き放射冷却を行っており、 この部位に温度計測を行うための温度センサーが取り付けられている。 この温度センサーは熱真空試験により十分に較正されており、 小惑星の温度を知るためにも有用である。 この温度センサーにより計測された小惑星イトカワへのタッチダウン時の温度変化を説明するために 小惑星イトカワの形状を考慮した温度モデルを作成し表面熱物性についての考察を行う。
December 15 Jun Takita Tokyo Univ. M2 presentation
アポロ熱流量観測データを用いた月食時温度履歴解析による月表層部熱物性の推定
アポロ計画では月熱流量観測を目的として月表面および表層部の温度計測実験 (HFE) が行われた。 本研究は、アポロ 15 号着陸地点で取得された温度データ中に含まれる月食時の温度変動データを用いて 月表層部の熱拡散率の推定を試みたものである。 過去の研究では、月の年周期の温度変動データを用いて月面下 2 m 程度までの月レゴリスの熱拡散率が 1.0E-8 (m2/s) 程度と求められている (Langseth et al., 1976)。 これに対し、短周期の現象である月食時の温度変動に着目して アポロ HFE データ中の温度プロファイルを調査したところ、 表層下 35 cm の測定点に月食に起因した有意な温度変化を見出した。 一様物性を仮定したモデル計算による解析の結果、 熱拡散率が 1.0E-8 (m2/s) の場合、 温度振幅レベルは観測データとほぼ調和したが、 観測された月食時温度変動データの深さ方向に対する位相差を説明するためには モデル計算において 1.0E-6 (m2/s) の熱拡散率の仮定が必要であった。 月の日周変動データの解析からも同様の結果が得られた。 一方で、月面で記録されたデータ波形は、 1.0E-6 (m2/s) の熱拡散率を仮定した場合のモデル波形と非常によく似ていることに注目される。 短周期の温度変動は年周期のものに対して熱スキンデプスが小さいため、 温度計測プローブ本体による影響を受けやすい。 プローブ構成材料であるボロンエポキシの熱拡散率が 2.0E-7 (m2/s) 程度と考えた場合、 計測センサーはプローブ上を伝わった熱を計測した可能性がある。

January

January 5 Tomoka Inoue Tokyo Univ. M2 presentation
はやぶさ XRS による小惑星イトカワ表層の Ca 含有量の推定
蛍光X線観測は、惑星探査の代表的な手法の一つである。 小惑星探査機はやぶさに搭載されている蛍光X線スペクトロメータは、 小惑星イトカワの表層の元素組成を観測した。 大気のない惑星に太陽X線が照射すると、表層から蛍光X線が励起放射される。 蛍光X線は元素に固有のエネルギーを持ち、 表層の元素組成 (Mg, Al, Si, S, Ca, Fe, etc) を定量的に決定できる。 Okada et al. (2006) は、イトカワ表層は Mg/Si = 0.78 ± 0.09、Al/Si = 0.07 ± 0.03 で、 Hコンドライトやエコンドライトよりも、 LコンドライトやLLコンドライトに近い、という結果を報告した。 本研究では、これら元素の他に小惑星を特徴付ける Ca の検出を試みた。 Ca は、Mg, Al, Si に比べ、高エネルギー側に検出される元素であり、 蛍光X線のカウント数が少ない。 さらに、イトカワ観測期間中の太陽活動度が低かった事から、検出が困難であるとされている。 我々は、数値シミュレーションから予想される各元素のカウント数と、適切な積分時間を見積もり、 Ca の存在の可能性について検討した。 本発表ではその結果について報告する。
January 5 Yoko Maruyama Tokyo Univ. M2 presentation
月惑星表層蛍光X線観測における粒子サイズ効果
惑星表層の蛍光X線観測において、高精度の元素分析を行う上で、 表面を覆っている粒子サイズによる影響は無視できない。 本研究では、蛍光X線強度の粒子サイズ効果を調べるために、 25-500 ミクロンの異なる粒度の岩石粉末試料を用いた実験と、 蛍光X線のモデル計算とを行った。 これより、室内実験におけるX線強度の粒度、位相角による変化が、 遮蔽効果を考慮したモデル計算とほぼ 10% の誤差内で一致する結果が得られた。 さらに、月レゴリスの代表的な粒度に焦点をあて、 平均粒度を固定し異なる分散を持たせた粉末試料が、 蛍光X線強度にどのような影響を及ぼすかを調べた。 これらの結果を紹介する。
January 12 Kouhei Kitazato Tokyo Univ. D2 presentation
はやぶさ探査機搭載近赤外線分光器観測における小惑星イトカワの表面不均質性
近地球型小惑星 25143 イトカワは, はやぶさ探査機の近接観測からコンタクトバイナリに似た歪な形状を成し, 表面を無数の岩塊に覆われていることが明らかにされた. また, 重力測定によってイトカワの平均密度が 1.9 g/cm3 と見積もられ, 天体内部に大きな空隙を持ったラブルパイル構造を成していると考えられている (Fujiwara et al., 2006). これらの特徴はイトカワが毋天体から放出された破片の再集積によって形成されたことを示唆しており, 表面の物質分布に天体の形成過程を示す情報が露呈していると考えられる. はやぶさに搭載された近赤外線分光器では, 空間分解した小惑星表面のスペクトルが約 80,000 本取得され, われわれはこれらのデータを用いて小惑星表面の物理特性および地域的不均質性を導きだした. これらの結果からイトカワの形成過程について議論を行なう.
January 19 Yasuyuki Saito Tokyo Univ. D2 presentation
月熱流量観測: これまでの理解と今後の課題
月は地球を除き、熱流量観測が行われた唯一の天体である。 したがって熱流量値を正確に決めることは、 固体惑星の内部構造や熱史を推定する上で、最も重要な観測量のうちの1つである。 月熱流量観測はアポロ 15 号、17 号ミッションで実施され、 それぞれの着陸地点で 21 mW/m2、 16 mW/m2と報告された (Langseth et al., 1976)。 また全球平均値を 18 mW/m2と推定し、 これが月熱流量値として、広く知られている。 ところが昨年、我々によって未解析の観測データがあることが明らかになった。 このデータを用いた解析により、観測データに含まれていた、 これまで不明瞭だった点を多く解決することに成功した (Saito et al., 2006)。 ただし月熱流量観測値が正確に決定されたわけでもなく、 また月全球平均値を推定するにもまだ問題点が多く残されている。 そこで本講演では、これまでの熱流量観測データの理解を整理して今後の課題を明らかにすると共に、 その課題を解決するための手順を含めた、今後の展望について述べる。
January 19 Kazunori Ogawa Titech D2 presentation
蛍光X線シミュレーション
蛍光X線組成分析では、X線の検出カウントを実際の元素組成へ変換する方法として、 理論モデル計算から妥当な組成比を推定する方法がよく用いられる。 現在 Hayabusa, SELENE, SELENE-2 などによる蛍光X線分析での使用を目的として、 fast simulation による蛍光X線シミュレータを構築している。 使用した理論モデルや今回新たに組み込んだ効果などを中心に述べたい。
January 26 Yuichi Iijima ISAS/JAXA presentation
SELENE の EMC の対応: 総合動作試験報告
SELENE では、HF 帯のレーダーを用いた地下構造探査を行う (LRS) 予定である。 このため衛星自身のノイズを押さえる必要がある。 SELENE での EMC 設計基準の設定、EMC コントロール、単体試験など各種の取り組み、 また衛星をインテクレーションした総合 EMC 試験結果を紹介する。 一連の対策により、SELENE は (大型衛星としては) EMC 上、世界一きれいな衛星となった。
January 26 Takehiko Arai Sokendai D3 new paper review
M. Lazzarin, S. Marchi, L.V. Moroz, R. Brunetto, S. Magrin, P. Paolicchi, and G. Strazzulla, Space Weathering in the Main Asteroid Belt: The Big Picture, The Astrophysical Journal 647 (2006) 2, L179-L182
本論文では、メインベルト小惑星の反射スペクトルを調査し、 太陽風の照射量 (衝突年代より推定) とスペクトルのスロープに対応関係があることを示している。 そして、この結果を応用したメインベルト小惑星の分類 (S, X, C) やその進化モデルの描像を示している。

February

February 2 Taku Yamamoto Tokyo Univ. M1 presentation
イルメナイトの分光学的解析
月面の Ti 分布を知ることは、月の海の形成過程を理解するために重要な情報である。 現在の Ti 分布図は、クレメンタインで得られたデータを用いて作られているが、 その解析過程でデータのばらつきが見られるため、十分な精度であるとは言いにくい。 そもそもイルメナイトのスペクトルにおいて、粒子サイズ依存性や組成依存性など、 詳細な理解がされていないのが現状である。 今回の発表では、先行研究を踏まえてイルメナイトのスペクトル解析方法を考察・発表する。
February 2 Kouhei Kitazato Tokyo Univ. D2 new paper review
W.-H. Ip, On a ring origin of the equatorial ridge of Iapetus, Geophysical Research Letters 33 (2006) L16203
Most recent Cassini observations by the Imaging Science Subsystem (ISS) showed that the third largest Saturnian satellite, Iapetus, has a curious ridge system exactly aligned with its equator (Porco et al., 2005). Because Iapetus has a large Hill sphere for the trapping of circum-satellitary material, a ring system might have been present during its formation. A scenario is proposed to describe how the equatorial ridge system could have been produced by the collisional accretion of a ring remnant subsequent to the formation of the proto-Iapetus.
February 9 Shota Ono Tokyo Univ. M1 presentation
SELENE-2 搭載岩石把持用エンドエフェクタの最適形状の検討
月の岩石試料を採取し分析することは、 月のみならず地球を含めた固体惑星の起源と進化を探る上で極めて重要な意味を持つ。 現在 JAXA は、月面にランダを着陸させることを検討しており、 岩石試料を採取・分析する実験装置 (SIP, Science Instrument Package) を搭載することを提案している。 岩石試料を採取する際にはエンドエフェクタと呼ばれる先端部機構が必要だが、 その最適形状はまだ検討の段階である。 本発表では、SIP の詳細を説明すると共に、 検討案の一つである指状の形をした爪による採取方式の場合の性能評価実験の結果を報告する。
February 9 Yasuyuki Saito Tokyo Univ. D2 new paper reveiw
N. Yan, E. Chassefière, F. Leblanc, and A. Sarkissian, Thermal model of Mercury's surface and subsurface: Impact of subsurface physical heterogeneities on the surface temperature, Advances in Space Research 38 (2006) 4, 583-588
BepiColombo の MPO (Mercury Planetary Orbiter) に MER-TIS (Mercury Radiometer and Thermal Infrared Spectrometer) が搭載される予定である. MER-TIS の目的として水星表面岩石の鉱物同定,空間分解能 500 m 以上での鉱物マップ作成, 表面温度と熱慣性の測定実験が計画されている. 本論文では最後の熱慣性測定実験に注目して, 表層下の不均質構造を見出す検討を行った. その結果について紹介する.
February 16 Masatsuna Iwasaki Titech M1 presentation
はやぶさ搭載 X 線 CCD の経年劣化
はやぶさで使用した CCD MAXI は、 深宇宙で観測をしたのは、はやぶさが初めてである。 今後セレーネでも同じ CCD を使用することから、 CCD MAXI の劣化を調査することは急務であると思われる。 そこで今回、XRS が宇宙空間での劣化状態がどの程度であったのかを、 XRS がクルージングフェーズ中に得たイメージデータから CCD の劣化についての経年変化について調べた。 今回、劣化の評価項目として、CCD 内でのホットピクセルの増加、 ゲインの変動がないと仮定しての暗電流の評価を行った結果を報告する。 また、XRS 固有の問題であると言える CCD に表れたコリメータ縞についても報告する。
February 16 Hiroshi Takeda Chiba Inst. of Tech. presentation
固体惑星物質科学
千葉工業大学の武田弘先生に講演をお願いしました。
February 23 Ryuhei Yamada Tokyo Univ. D3 presentation
月面上におけるペネトレータ搭載用地震計の特性と月震観測
現在、月惑星や有人での探査が困難な地域に地震計や熱流量計などの観測機器を設置するツールとして 投下貫入型のプローブ「ペネトレータ」の開発が行われている。 本研究ではここまでに開発されたペネトレータに搭載する二成分の月探査用短周期地震計について、 月面に貫入設置させた後の特性を想定し、 どの程度月震が観測されるか、(ここでは特に S/N) についての評価を行っている。 本発表では 2006 年 6 月のサンディアでの貫入衝撃試験後に行った地震計の性能確認試験の結果を踏まえて、 現状までの評価結果について報告を行う。
February 23 Tomokatsu Morota ISAS/JAXA new paper review
Hitoshi Kawakatsu, Sharp and seismically transparent inner core boundary region revealed by an entire network observation of near-vertical PKiKP, Earth Planets and Space 58 (2006) 855-863
We present an entire network observation of near-vertical PKiKP from the Japanese seismic network, Hi-net. The record section of an intermediate depth (298 km) earthquake in Mariana (2001/07/03 13:10:43, Mw 6.5) shows remarkably clear arrivals of PKiKP in an epicentral distance range of 14-24 degrees. From more than 170 individual picks of PKiKP, we performed array analyses of PKiKP-related seismic phases to infer the structure near the inner core boundary (ICB) with unprecedented high quality. Both PKiKP and PcP showed strong similarity in waveforms up to a frequency of 2 Hz. Both amplitude and waveform analyses indicate that the ICB may be as sharp as the CMB and no thicker than 2 km. The slant stack for a 1-2 Hz frequency band, where PKiKP and PcP show energy peaks and where the background noise level is ∼3% of PKiKP, indicated no conspicuous phase other than SKiKP. We also noted that no gradual energy build-up of the inner core scattering signal was observed. Thus, this part of the inner core appears highly transparent seismically in this frequency range. In the 0.5-1.0 Hz frequency band (10-15% noise level), we observed one possible reflection phase from a slightly dipping (∼5º) reflector/discontinuity inside of the inner core around a depth of 470 km below the ICB (3% reflection). However, this phase may be due to pPKiKP water/crustal layer reverberations. Other than this, there appears to be no sharp (∼5 km thick) horizontal discontinuity in the top 400 km part of the inner core whose reflection amplitude is larger than ∼2%. Key words: Inner Core, PKiKP, ICB, stacking, array analysis.

March

March 2 Nagisa Machii ISAS/JAXA presentation
二段式軽ガス銃のしくみ & 太陽系の形成過程における初期集積過程の研究計画
前半は二段式軽ガス銃の仕組みや、宇宙研で行われている二段式軽ガス銃を用いた実験を簡単に紹介する. 後半は自分の修士課程での研究計画について述べる. 惑星や小惑星、隕石といった太陽系の天体や物質は衝突の結果、 形成したり成長したり破壊されるので衝突現象の理解は惑星形成過程を考える上で重要なことである. ダストが成長し、小さな石の塊になり、 それらがさらに衝突合体を繰り返すことで微惑星や小惑星へと成長し 最終的に惑星へと進化していったというのが現在考えられている惑星形成のプロセスである. しかし、物質の集積過程に関する研究は、ダストや隕石、クレーターなど我々が手にしたり、 目にしたものでしか行われていないのが現状である. もっと大きな物質 (例えばこぶし大程度) 同士の衝突実験からの集積過程の研究が行われないのはなぜか? それは、我々がこぶし大程度の物質同士の衝突現象の直接的証拠を見たことがなく、 このサイズ領域でどのような力が支配的なのかがまだ解明されていないからである. そこで、私はこのこぶし大程度の物質が衝突によりどのように成長していくのかに主眼をおき、 実験からこの段階の集積過程を理解するのに必要なパラメーターを導き出したい.
March 2 Yuki Sarugaku Tokyo Univ. D3 new papre review
Ignacio Ferrin, Secular light curves of comets, II: 133P/Elst-Pizarro, an asteroidal belt comet, Icarus 185 (2006) 523-543
過去の論文で、著者は、 8 つの彗星について明るさの日心距離 (時間) に対する変化 (secular light curve、以下 SLC) を調べ、 彗星活動が始まる日心距離や明るさの最大値などの SLC を特徴づけるパラメータを比較し、 彗星の年齢 (揮発性物質の枯渇度) などについて議論している (Ferrin, 2005)。 この論文では、SLC に加え、自転周期、カラー、彗星核の密度などの観点から、 メインベルト彗星の 133P/Elst-Pizarro の彗星としての特徴について述べている。 今回は、まず Ferrin (2005) を参考に SLC について説明し、 133P と他の彗星の SLC の違いを中心にこの論文を紹介する。
March 30 17:00 Yuji Harada ERI D3 presentation
惑星変形による慣性交換の可能性: 火星における真の極移動への示唆
火星にはタルシスと呼ばれる巨大な火山地域が存在する. そしてタルシス地域の形成によって火星は大規模な真の極移動を経験した, という可能性が地形・重力・磁場等の間接的な状況証拠から示唆されている. 所で一般に真の極移動は惑星の慣性能率テンソルの擾乱によって駆動 される.特に次の二つの擾乱,即ち惑星表層の質量荷重による擾乱, 及び太古の惑星回転の化石バルジによる擾乱の競合によって最終的な極の位置が決定される, と過去の理論的研究において結論付けられている. しかしながら過去の研究では, 各々の擾乱の変動による極の位置の時間変化に関しては議論されていない. 一方,例えば火星の地形・磁場等の研究からは極移動の軌跡の推定も試みられている. 従ってこのような制約条件と比較可能な, 時間変化を含めた力学モデルが必須である. 時間変化を含むモデルの構築を通じて過去の極移動を復元する事は 表層環境の変遷を知る為の手掛かりとして極めて重要であろう. そこで本研究では火星における永年的な真の極移動についてモデル計算を行なう. 具体的にはタルシス地域を単一の軸対象荷重と見なし, 荷重の大きさ,及び荷重が最初に定置される座標を変数として与えてパラメータースタディを行なう. 特に上述の二つの擾乱に起因した粘弾性変形により慣性交換が引き起こされる可能性について調べ, 現実の火星の極の位置の大変動との関連性について論じる.